5 / 84

夢魔 4

モヤのように見えるのに熱さと質感を持った指はねっとりと乳首をつまみ、中に生まれた快楽の芯をとらえる。 摘まれ離され、また摘ままれるそのリズムに追い込まれていく。 胸を掌でもまれる淡さと指先で摘まれる乳首の芯から来る鮮烈さが、背中を反らしてしまうくらい気持ちいい。 芯。 その芯をもっと苛めて。 そう思ってしまう。 この半年、毎晩毎晩そうされたからこそ、 淫らに発達してしまった乳首が甘く疼く。 「ああっ・・・」 背中を反らして声を上げていた。 ここが沢山の人がいる店だと分かっているのに。 感じてしまうことをやめられない。 もちろん夢だ。 でもこれは、目を開けて見ている夢で。 カウンターの中から驚愕した目で自分を見ているバーテンはおそらく、現実でも『そう』なのだ。 自分は目を開けて、でも夢につかまってしまったのだ。 目からの情報を夢にそのまま流し込んでいるからこそ、この光景が現実なこともわかる。 でもバーテンにはモヤのような指は見えていないだろう。 分かってる。 部屋に友人を呼んで助けを求めたこともあったから。 バーテンには服を捲りあげ尖った乳首を晒して喘いでいる男しか見えないはずだ。 友人は最後まで、なにも見えなかったと言った。 でも。 肌に凹む指の跡や、まるでだれかに摘ままれて動かされる乳首や色んな不自然なモノを友人は見ることになった。 泣いた。 助けを求めた友人を。 実は好きだったからだ。 それを思い出してまた泣いた。 今、これから、あの時と同じように沢山の人の前で、犯されるとわかったから。 背中に分厚い肉体を感じた。 見えるのはモヤのようなモノなのに、触れた背中の肌から厚い男の胸板なのがわかる。 そしてズボン越しに押し付けられるのは、巨大すぎる陰茎だ。 何度も何度も、夢の中、そして現実で犯されてきたそれだ。 見えるのはボンヤリしているのに、それの硬さも熱さも・・・味まで、もう男は知っていた、 泣いた。 友人の前でそうなったのをまた思い出したから。 好きな男の前で、その時は夢だと思っていたけれど、犯され喘いで何度も何度もいったのだ。 その時はもっと夢らしい夢の中にいたけれど。 だから、友人が見ていることも分からなかったけれど。 モヤのような人間の形をした何かは友人には見えなかった。 でも見えない何かに犯されるのを友人は見ていた。 凹む指の跡、唾液に濡れていく乳首。 自分ではできないはずの体勢を空中でとる、身体。 友人は後ろの穴がパックリ空くのまで見た。 その中から、白い精液が溢れ出してくるのも。 口を大きく開き、涎を垂らしながら見えない性器をしゃぶるのも。 口の中のイヤらしい舌の動きさえ、性器が見えないからこそ友人は見たのだ。 どれほど欲しがっているのかがわかるその舌の動きを。 男が見えない何かに穴から喉まで犯されて、それにイキまくるのを友人は怯えながら一晩中見ていたのだ。 止めようとしても、見えない空中に何もつかむことは出来なかった、と友人は言った。 男に触れて犯すことができるのに、他人が触れることはできないのだ。 そう、男はおかしな夢を見てるだけだとその頃は思ってて、友人に助けを求めたのだった。 ねむったら起こして欲しくて。 その結果。 密かに思っていた友人の前で、ソレに犯され喘ぎ、イキまくる姿を見られてしまったのだった。 友人とはそのあと会ってない。 会えるわけがなかった これは夢で夢じゃない。 だから、ズボンを下ろされカウンターに乗せられるのも脚を抱えあげられるのも夢で現実。 クチュクチュと乳首を舌で刮げるように舐められているのも現実で夢。 「ひいっ、ああっ、・・・ひうっ」 気持ち良すぎて喚いてしまうのも夢で現実。 もう、限界まで張り詰めていた性器から迸らせてしまったのも現実で夢。 「ああっ・・・ああっ!!!」 イキながら泣いた。 気持ち良くて泣いた。 そこをそんな風に舐められるのがもう大好きになっていたから。 まさか。 目を開けながら寝てしまうとは。 身体は意志を裏切った。 寝ないためにこの店に来たのに。 脳は寝ているのだ。 モヤが笑った。 顔のない顔が見えて何故かそれがわかる。 腹から胸にまで飛んだ男の精液を使って穴を解され始めたとき、さすがになり響く音楽だけでない、ざわめきが聞こえてきた。 喚いていたパフォーマーの声もしない。 煩い音楽は鳴り響いているけど、それがもう流れるだけになっているのがわかる。 皆が見てる。 見てるのだ。 でも穴にデカい指でそこを広げられるのは気持ちよかった。 気持ち良すぎて、またイった。 何日も寝ていない脳は、もういい、と言っていた。 どんな夢でも、寝ていろと。 そして何より気持ち良かった。 良すぎた。 堪らなかった。 「挿れてぇ!!!」 叫んでいた。 もうどうでも良かった。 デカくて熱いそれが欲しかった。 大勢の見ている前で、ソレの熱くて硬くてデカいそれを脚を担ぎあげられたまま受け入れていた。 見ている連中にはカウンターの上でポッカリ開いていく穴と、不自然にもちあげられ、開かれた脚と、のぞけるの男の背中しか見えないだろう。 「ひぐぅっ・・・ふひぃ!!あぐう・・・」 涎をたらしながら、カウンタの上で背中を反らせ、担ぎあげられた足のつま先を丸める。 中をみっちり広げられる熱さと質量が堪らなかった。 ああ死ぬのだ、 そう分かった。 もうとっくに限界だった。 毎晩毎晩夢の中で犯され続ける度に弱っていった。 でも。 もう良いか、そう思った。 だって気持ちいい。 なにもかとどうでも良くなるくらいに。 もういい。 逃げるように消えた友人を想った。 動かれた。 ズンと深く重い突き上げは、腹を突き破るようで、でもそれがたまらなく甘かった。 「くひぃ ぐはぁっ!!!」 叫んでまた白濁が飛び散る。 カウンター上でイキ狂う。 細かく何度も飛びちる精液。 腹から振るえて痙攣する。 中でもイく。 突き上げながら、乳首に甘く 歯を立てられて、泣きながら首を振った。 胸の甘さと、中の重い突き上げの両方がどちらも同じ位、脳を焼く。 「イク、イク、イクう!!!!」 喚き散らした。 カウンターのすぐ近くまで人々が来ている。 誰も助けてくれない。 誰から強く揺さぶられたり、頬を叩いてもらえたなら夢から目覚めてこれが終わるのに。 見えなくても、なにかが犯しているのはわかるから、怖がってそれ以上は近寄らないのだ。 でも。 もういい。 「気持ち・・・い」 それに狂って死ぬことにした。 笑い声。 きっとこの声は見えない連中には聞こえない。 夢を見ている自分だけに聞こえるのだ。 出された。 その熱さにさけんだ。 「ぐうおぅっっ!!!!」 白目を剥いた。 分かってた。 これで終わらないと。 怯えきった人々がパニックになっていた。 背中だけをカウンターにつけて、男が見えない何かに脚を担ぎあげられ犯されていることをとうとう理解したからだ。 重力を無視したその姿勢。 空中で痙攣している脚 自分の力では持ち上がらない確度で空中にあり、ガクガクと揺れる尻。 精液が限界まで開ききった穴から零れ泡立ち、まだその中で見えないペニスが、腸壁を裏返すかのように動いているのが見える。 そのイヤらしさ以上に恐怖が会場を支配した。 誰かが悲鳴をあげた。 それは連鎖した。 悲鳴とパニックになり、ドアへ殺到する人々。 突き飛ばされる音、踏まれる音、怒声、悲鳴。 男はその中で、最期の快楽に酔いしれていた。 「気持ぢイイ・・・イイっ!!!」 泣きながら喚いた。 もう仕方ない。 仕方ない。 間に合わなかった。 男は人々と一緒に喚いた。 叫んだ。 警察がたどり着く前に。 男はもう死んでいた。 恐怖とよく似た快楽の表情をうかべたまま。 カウンターの上で抜け殻になって。 警察より早く男をみつけたその人はその死体の前で舌打ちした。 「間に合わなかったな・・・」 その声は残念さが滲み出ていた。 「宿主が死んだなら探すのが厄介になる・・・」 その人は警察が現れる前に姿を消した。

ともだちにシェアしよう!