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夢魔 8

不意に眠気に襲われた。 頭でも打ったのだろうか。 「なんだか、眠い、です」 男に訴えた。 「そうか。気分は悪くないな?」 心配そうに言われて首を振る。 明日のことを考えてふわふわシアワセな位だ。 「寝とき。目ぇさめてからでメシはええやろ」 男が頭を撫でてくれて。 その心地よさにさらに眠気が。 少年はベッドに沈みこむような感覚に囚われた。 眠りがそこにやってきていた。 幸せな気持ちで眠った。 眠って。 深く深く。 そこで何かが待ち構えていた。 深い底で誰がが甘く胸を啄んでくる。 これ好き。 男がいつもしてくれてるやつ。 唇で乳首を食みながら優しく舌で舐めてくれるやつ。 音を立てて軽く吸って、そうされるのが少年は大好きだった。 女代わりに使われてきたから、乳首だって散々弄られてきて、少しでも辛くならないために身体はそこの刺激で勃起することも覚えたけれど、そこでイケるようになったのは男としだしてからだった。 「感じやすくて可愛いなぁ・・・女でもこんなにならん」 男に嬉しそうに言われて、泣く。 豊かな胸の女の人と比べられたら、自分の身体なんて、と思うから。 「アホ泣くな。女のんと比べておまえのがええ言うてやっとるんやん。デカい胸を揉みまくるんもええけどや、お前の可愛い乳首なら一日中でも舐めてられるわ。こんなに凝って、たまらん歯触りや。良すぎるわ」 男は平然と女と比べてくる。 悪気なく。 「ええ乳首や。オレが可愛がっとるからここもどんどんやらしなって・・・エロいなぁ」 甘く噛まれていつもイク。 胸だけでいける。 「イクっ・・・」 イク時は申告制なのだ。男にそうしろって言われたから。 だから今もそうしてる。 男の舌が乳首を愛してくれているから。 「 !!!」 名前をよばれる。 え、でもなんでそんな声で。 そんな怖い声で呼ばれたことなど1度もない。 でも、男が入りたそうだから脚を開いた。 昨夜もしたから、慣らさなくても大丈夫だと思う。 でも、そこを舐めてくれてる。 男はそこに挿れる前に舐めるのも好きなのだ。 その舌が心地よくて、微笑んでしまう。 幼い頃ほど全身を舐められた。 変態たちに。 気持ち悪くて辛かった。 でもこれはちがう。 全然違う。 男と初めてした時、実はまだ傷は完全に癒えてなくて、だから男は癒すようにここを何度も舐めてくれて。 男はあの時、癒えて無かったのにしてしまっていることを今でも気にしてるけど、少年はあんなに優しくだかれたことなんかなかったのでそこは全く気にしてない。 「気持ちい・・」 吐息を吐き身体を震わせてしまう。 舐められるだけでイケる身体にされてしまってる。 「 さん」 名前を呼ぶ。 こんな時にしか呼べない。 はずかしくて。 口下手で、話すのが苦手で、今でも自分からは話しかけられない。 話したところで。 何も上手く話せない。 でもこんな時になら名前を呼べる。 呼んでいい。 熱くて大きなのが欲しがりびくつくそこに当てられた。 ほしいモノだ。 ほしい欲しい欲しい。 この人のだから欲しい。 大きな背中にしがみついた。 それがゆっくり入ってくる。 気持ち良かった。 痛みによく似た気持ち良さ。 これが好きだと思う。 「 !!!」 名前を叫ばれた。 怒鳴り声だ。 頬を叩かれる。 嘘。 そんなことはしない。 いつだって優しいのに。 でも怖い声。 何? 何? 少年は目を開けた。 自分が寝ていたことに気付く。 あれ、おかしい。 男が肩を掴んで自分を揺さぶっている。 あれ、おかしい。 男は今自分の背後から貫いているはずなのに、なんで自分の前にいるのか。 今、ゆっくりゆっくり、心地よく動かしてくれているのは良く知ってる男のものなのに。 男は鬼のような形相だった。 肩に指がくい込んでいる。 男は服1枚脱いでない。 外でする時以外は全部脱ぐのに。 あれ、おかしい。 でも気持ちいい。 優しく溶かすように動かれて、甘く鳴いてしまう。 「オレが分かるか!!分かるか!!しっかりしろ!!」 男が怒鳴ってる。 「気持ちい、です・・・ああっ・・・溶けちゃう・・・あっイク・・・いっちゃう・・・」 少年は男を見つめながら申告する。 そしてまた痙攣してイッた。 「オレじゃない!!分かるかお前としてるのはオレじゃない!!」 男が怒鳴った。 少年は目を見張る そんな。 男のモノなら中から記憶してる。 そんなはずは。 でもベッドの上で背後から貫いているはずの男がベッドの足下から少年を覗き込んでいるのはおかしい。 少年はゆっくり背後を振り返った。 そこに男がいなければならないのだ。 尻は抱えあげられ、中を擦りあげる慣れた動きに自分の尻はいやらしく揺れていた。 でも。 でも。 そこには誰もいなかった。 何もいない場所で尻が持ち上げられ、ゆれていた。 少年は悲鳴をあげた。 完全に目が覚めて。 それと同時に見えない何かに持ち上げられていた腰がベッドに落ちていた。 悲鳴を上げる瞬間に出されていた。 入っていたものがなくなったけれど、開げられたそこはまだ閉じず、明らかに精液であるものが流れ出していく。 男に抱きしめられ、さっきまで抱かれてた身体が反応してビクンビクンと痙攣してしまった。 ガチガチと少年は震える。 何かに犯されていたのだ。 夢の中で男としていると思っていたのに。 何かが。 何かが。 本当に自分を犯していたのだ。 恐ろしかった 「あんたは深く関わりすぎた、また同じようなことがあるかもな」 陰険そうなアイツの言葉が思い出された。 「クソが!!!」 少年には聞かせた事がなかった声で男が怒鳴った。 怒鳴られ育った少年は怯えて身体硬くする。 でも男は少年を抱きしめて離さない。 強く強く抱きしめてくる。 少年は泣いた。 男の前で、他の何かに犯されて、喜ぶ姿を見られたのだろうか。 男にだけは。 他の誰にでも何されたってもう平気なはずなのに、男にだけは。 他人にされてるところを見られたくなかった。 人に使われる汚い肉である自分を。 中から脚へ垂れていく精液が、男のものじゃないことに泣いてしまった。 「大丈夫。大丈夫や!!」 男は優しい声で言った。 「オレが絶対なんとかしたる」 でも抱きしめる腕は今までと違って怖い位強かった。

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