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夢魔 14

男は歯噛みしながら見ていた。 少年が甘く鳴くのが大好きだったが、自分でないものがさせてると思うと、腹の中でドス黒いものがのたうち回る。 「諦めろ」 師匠や弟の恋人からのアドバイスはその通りだと分かってはいる。 何度か憑かれた例は見てきた。 専門家ではないけれど、奇怪な事件はいくつか師匠と体験してきている。 師匠の友人、タテアキによると、男には『才能』がある、とのことだ。 師匠にはないらしいが。 それで、師匠に言われてタテアキの手伝いもした事がある。 タテアキは時には奇怪な事件のときに頼る『専門家』であり、時には金払いのよい『依頼者』でもある。 手伝いというよりは、師匠に何度かタテアキに金でうられたのだ。 何度も死にかけた。 師匠以上に人使いが荒いのだ。 なので、タテアキに関わるのは男としては真っ平なのだが。 おかげで、分かったことはある。 怪異に半端な知識で関わるな、ということと、取り憑かれたなら、体力勝負になる、ということだ。 取り憑かれたら、それは餌にされてる例が多い。 体力をどれだけ維持出来るかが生死を分ける。 夢を見ている状態で犯されていたとしても、脳だけでも寝ている状態の方が、まだマシだと言うのが『専門家』の助言なら、それを聞くしかないのは分かっている。 死なれるのは嫌だ。 毎晩のように抱いて可愛がっているのだ。 帰れる時には。 何度抱いても可愛くてたまらない。 抱いてると、家に帰ってきたのだと実感する。 実家以外で、部屋を寝る場所ではなく家だと思うようになったのは少年が来てからだ。 そんな存在は初めてで。 家族は家族で大事だし、何かあれば護ろうと思ってたきたが、こんな風に誰がを腕の中で安らがせたいなんて思うことなんてはじめてで。 その前に散々イかせて鳴かせてからだけど。 家を離れて帰れない時も、ずっと少年のことは考えていたし、抱けないからって少年の代わりに誰か他の男の尻を犯そうとは思わない。 誰かを代わりなんかにしない。 ちゃんと遊びで女を抱く。 そこは男なりのケジメがある。 男は少年を大事に思ってた。 初めてだった。 抱く相手にそんな気持ちを持つのは。 だから。 タテアキなり、弟の恋人である「専門家」がなりが来るまで、大人しく待つしかないのはわかっているのに。 これを耐えなければならないのが分かっているのに。 耐えられそうになかった。 ベッドの上で、見えない手が少年のシャツを捲りあげ、少年の胸を楽しんでいた。 わかる。 それは男がいつもしてるからだ。 尖った乳首が少年が触ってもいないのに、震えている。 つまんで擦り合わせているのだ。 そうすれば少年は快楽に狂うから。 踵で反り返り、捩れる少年の身体。 細く痙攣するその身体。 その身体に覆いかぶさり、皮膚でその反応を味わうのが男はとても好きだった。 だが、今、それを楽しんでいるのは男じゃない。 少年に取り憑いている、何かだ。 尖って細かく震える、そう見えない指に扱かれている乳首の先が弾かれるように動き、濡れている。 舌で舐めてやがる。 男は怒りで死にそうになる。 男は少年の乳首の味も歯ざわりも気に入っていて、舐めて楽しむのは絶対だったからだ。 少年が鳴く。 嫌だ、と言いながら、でも鳴く。 感じているのはもうズボンをずらされ剥き出しになった性器が震えながらボタボタ濡れているからわかる。 怒り。 身体が震えていた。 オレのだ。 オレの。 でも少年は嫌だと泣いてた。 男の名前を呼んで。 でも、男ではないものに感じて。 それに胸の痛みと。 確かなよろこびもある。 自分じゃないと嫌なのだと言うことに。 「嫌っ!!!」 でもそう叫びながら少年は白濁を迸しらせて。 他の何かにイかされて。 男は唇を噛んだ。 口の端から血がにじむ。 こんなのは耐えられない。 耐えられないが、この場から離れることなど出来ない。 だって少年は男のモノだ。 男がずっと抱いて守ると決めたものだ。 ずっと傍に置くと決めたのだ。 脚を押し広げられ、見えない何かにしゃぶられながら、穴を弄られる少年を見つめる男は鬼のような形相だった。 見えないからこそ、少年の抱かれ慣れて、女性の性器のように縦割れた後孔が、見えない指でズブズブとわり開かれていくのも、見えない口の中にしゃぶられている少年の性器がいやらしく蠢くのも見えて。 少年が背中を反らして悲鳴を上げるのが、ペニスの先の穴を舌でほじられているからだとわかってしまうのは、そうしてきたからだ。 怒りに死にそうになりながら、でも、それからも目を離せない。 コレを少年から引離すことは出来ないし、眠りから起こすことも得策ではない。 分かっている。 分かっているのに。 男は吠えた。 どうすることも出来ないからこそ吠えた。 他の何に少年が犯されるのが何故こんなにも耐え難いのかがまだわからないくせに。 「オレのやのに!!!」 その言葉が全てなのに。

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