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夢魔 20

かかなやあのわや、さはさら きなやさはらなか、さはさは 少年が喚いた。 地響きのような低音、切り裂くような高音の両方で。 部屋の窓ガラスがひび割れる。 この部屋のガラスは安物じゃないのにだ。 男は高級品と金で買える安全が好きなのだ。 安アパートに住む守銭奴の師匠とは違う。 しかし、このまま避けているだけでは持たない 身体に限界は来る。 それに。 少年も人間の限界を超えてる動きをさせ続けたのなら、入れ物として壊れてしまうだろう。 中身は入れ物を気にしない。 新しい入れ物を探すだけだからだ。 どうすれば。 どうすれば。 「わかってるね、寝かせたら・・・・」 タテアキの言葉が思い出された。 ああ、そういうことやな 男は理解した。 でも、それは不本意だった。 だが。 仕方ない。 からふなやか かならさらな 少年が喚き、床を蹴りその指で男の目をくり抜きにくる。 男は待った。 自分の目の数ミリ前までその指が来るのを。 そして、眼球に指が突き立てられそうになる瞬間まで、瞬き1つしなかった。 そして。 少年の、手のひらではなく手の甲、反対側に折れ曲がった指先が男の眼球に触れる直前、 少年の両耳の上を手のひらで挟むように男は叩いた。 パシュッ 軽い音はやけに響いた。 驚いたように少年の目が見開かれた。 つりがっていた目が、無邪気な驚きに。 切り裂くように歪んだ口は、小さな吐息を吐く唇に。 歪みきった骨格も、お湯をかけたビニールのように縮んで元に戻っていく。 折れ曲った身体はゴムが切れたように宙で跳ね上がりもどり、 床へと落下していく。 男はそれを抱きとめた。 少年は。 可愛い、男だけの少年に戻った。 男が少年の脳を揺らし、意識を奪ったから。 だが。 それは。 男には許せないことが始まることの意味でもあった。 「眠らせておけば、犯されるのが始まる。自分が来るまで眠らせて犯させておけ」 タテアキはそう男に言おうとしたのだ。 ギリギリと男は歯ぎしりする。 少年を抱きしめながら。 抱きしめているのに。 もう始まっていた。 少年が喘ぎ始める。 男では無いものの愛撫に。 男がふれてないのに、まくりあがったシャツで露になった少年の乳首が動いているからだ。 摘まれ擦り合わせように。 男とこれだけ密着しているのに。 乳首は自在に動かされている。 見えない何かは男の肉体をすり抜け、少年だけに触れているのだ。 胸を弄られ、少年が中から感じているのが抱きしめいるからわかってしまう。 もう硬くそそりたち始めてる。 穴の中もキュンキュンしまっているだろう。 仕方ない。 仕方ない。 だが。 気に入らないことには変わりなく。 気に入らないモノを始末も出来ず。 男は歯噛みするしかなかった。

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