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仮面 13

ゾワリとした。 わかってしまう。 何度も何度もソレらと接触したからか、それとも、注がれた精のせいで人間でなくなってしまっていゆからか。 そこにいた人は呪われていた。 怪異に取り憑かれているのだと分かった。 少年はたまたま曲がった街かどで出会ってしまった そこに崩れ落ちたように倒れている人は呪われている人だった。 それほど歳は変わらない少年。 まだ寒いのに長袖のシャツ1枚、そして裸足。 歩道の上に倒れていた。 いけない、と思った。 近寄ってはいけない。 イケナイ、イケナイ、この人はマズイ。 でも見捨てられなかった。 真っ白な顔で、痩せこけて。 まださむいのにシャツ1枚で。 少年もこんな風に道に倒れていたこともあった。 部屋から逃げて通行人に助けを求めたこともあった。 最初から全てを諦めていたわけではないのだ でも誰も助けてくれなかった。 その人たちが泣いてる子供を見捨てたのは仕方ない。 狂った父親が追って来るのをみたならば。 そうでなくても。 あの安アパートの住人達はみんなあの部屋で何が行われていたのか知っていたはず。 壁はうすかったから。 でも。 みんなあの狂った父親が怖かった。 化け物から助けてくれたのは。 あの人と彼だったけれど。 父親から救い出してくれたのは誰よりも男だった 男が救い出してくれた。 病院から退院する時に迎えに来てくれたのは男で。 これから男とこの街から離れて遠くの街で暮らすのだと言われた。 病院で何度もやさしく抱かれたから・・・男は入院中の少年を抱いたのだ、男は抱く場所や機会を選ばない・・・男のことは恐くなかった。 抱かれることを承諾をしたのは、拒否する理由もなかっただけだ。 承諾しようとしまいと抱かれてきたのだし。 正直どうでも良かったし、助けてくれた人たちに返せるものは何もなかったから、まあいいかと思ったのだ。 でも「男を抱いてみたいんや。お前慣れてるやろ?優しくするから抱いてもええか?」そんなことを言って、【本当に】優しく少年を抱いた人は初めてだった。 優しいキスも。 傷付いた身体を労りながら抱かれるのも。 思いやるようにだかれた。 少年を無理やりイキ狂わせたりしない。 溶かして甘やかして、沢山キスして、グズグズにして。 優しくて。 あまりの優しさに泣いてしまって。 「可愛いなぁ・・・お前オレのになるか?」 そう何度も囁かれて。 頷いたのに深い意味はなかった。 でも本当に迎えに来た。 警察沙汰には出来ないと聞いていた。 でも、悪いようにはしない、と男の【師匠】が言ってくれてはいた。 上手く行けば父親から切り離してもらって、どこかの施設に入れるのかもしれないくらいは思ってた。 少年院であれなんであれ。 でも、父親のような人間はどこにでもいて、自分のような生き物を見つけて支配しようとするからまた支配されるだろう。 そして何より父親が自分を手放さないはずだ、どうやってでも取り戻しにくるだろうと分かってた。 だから。 何も変わらないから期待しないと思ってて。 せめて、優しく抱かれたことを覚えておこうと思ってて。 名前を聞いておけば、と後悔してて。 そんなわけで。 迎えが来るとは聞いていた。 でも、迎えに来たのが男だったことに呆然としたのだった。 「迎えに来たで」 そう言いながら男はもう自分を抱き上げていて。 タクシーにのせられて・・・。 生まれて初めて乗る新幹線でその土地を離れて。 生まれて初めて車内で駅弁を食べさせてもらって。 アイスまで買って貰って、喜んだら優しく笑われて。 男の肩にもたれて眠って。 男の部屋に連れて来られたのだった。 男が父親をどうしたのかは知らない。 でも、男はそういうトラブルのプロだから。 父親が二度と自分に関わらないことだけはたしかだった。 そこから。 ずっと夢みたいで。 自分を助けてくれた人がいた。 いたのだ。 だから。 イケナイイケナイとわかっているのに、立ち止まってしまった。 他の人たちのように通りすぎるべき。 警察や救急車でもいい。 でも。 わかってた。 警察や救急車ではこの人をたすけられない。 もちろん自分なんかじゃ。 でも。 でも。 見捨てられなかったのだ。 だって。 自分は助けてもらったのに。 人を見捨てるなんて。 出来なかった。 少年は倒れているその子、自分と歳の変わらないその子の肩を揺さぶり声をかけた。 「・・・君、大丈夫?」 青ざめながら。 自分が何をしているのかは理解していた。

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