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仮面 14
イガラシが仮面を拾ったのは数日前だった。
高校の帰りに。
夜目にも鮮やかなグリーン、目をやってしまうのは当然だった。
仮面は奇怪な貌をしていた。
でも美しい造形であることは確かだった。
木に彫られた顔は目を見開き口を大きく開け舌を突き出し、顔にはブルーや朱で彫られた文様をいろどられている。
髪は染めれ編まれた縄で出来ていた。
手の込んだ、高い技術で作られていることがわかる美しい仮面で。
少し前に道に落とされたばかりなのか、綺麗だった。
拾いあげてみれば、その仮面は見かけの重厚さとは違って軽かった。
仮面の裏をみれば木彫りなのがわかった。
よく出来た創りで思わず見つめてしまう。
仮面の目の部分はくり抜かれて、そこから見えるようになっていた。
思わず顔に当ててしまったのは仮面を手にしたらだれもが思わずしてしまうことだろう。
目の前に仮面があって、それを着けられるなら・・・。
でも、まあだれが着けていたかも分からないし、何しろ外に落ちていたのだ。
顔に着けないように、ちょっと離しておいて、片手でそれを自撮りしてみただけだった。
仮面の穴から外を見た瞬間、奇妙な感覚がイガラシに起こる。
すべてが初めて視るような感覚。
さっきまで見ていた景色が、生まれて初めて見るように思えた。
見知らぬ場所。
見知らぬ光景。
毎日毎日眺めている近所の風景でしかないのに。
仮面を顔から離してみる。
仮面の目の穴から見る風景とはちがって、それはいつも通りの光景だった。
また顔に近づけて仮面の穴から見てみる。
ああ、やはり。
見知らぬ風景のように見える。
何故だかそれに奇妙に心を奪われた。
同じモノが違って見えることに。
そんなことが有り得るはずはないのに
イガラシは仮面を持ちかえることに決めた。
これは、誰かが捨てたというにはあまりにも価値ありそうなモノだったし、警察に届けるべきだとは思ったが、でも、そうしたくなかった。
これはボクのモノだ。
そうイガラシは思った。
執着が生まれていた。
拾ったばかりの仮面に。
それは。
危険な徴だったのかもしれない。
でも、イガラシは仮面を大切に胸に抱え、家に急いだのだ。
持ち主か取り返しにくる前に。
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