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仮面 24
「一人に・・・一人にしないで・・・」
イガラシは泣いた。
もうすぐ犯される夜が始まる。
恐ろしい夜が始まる。
もう心はボロボロだ。
やっと逃げて。
助かる可能性を見つけたけれど、でも、まだまだ犯されなければならないと知ってイガラシの心は限界だ。
少年も「どこにいても一緒やから家に返せ」と彼に言われたものの、そういうわけにはいかない。
少年にはイガラシの気持ちがわかるのだ。
助けを求めて逃げ出す。
そこがどれほどの努力が必要だったか。
それは気力を振り絞った戦いだったのだ。
戦って。
それでもダメだった時のあの無力な敗北感を少年はよくよく知っている。
一度負けると二度と逃げられなくなる。
少年も逃げてダメで。
そこから長い長い間、逃げようとさえしなかったのだ。
煙草で焼かれながら。
「無理だぁ・・・またヤられたらもう、オレ、ダメになるぅ・・・」
イガラシが震える。
その言葉の意味が少年には本当にわかった。
なんとかしてやりたい。
そう思った。
「二人で頑張ってみよう。とにかく、やれるだけのことをしよう」
少年はイガラシの手を握り言う。
これは。
初めて逃げた日の自分だ。
結局誰にも助けてもらえず、苛烈な折檻をうけて、逃げる気力を無くした自分だ。
少年はイガラシを助けたかった。
「オレは・・・離れないよ。君を見捨てない」
少年は言った。
イガラシは声を上げて泣いた。
少年はイガラシを抱きしめていた。
だが、時間はもうすぐだ。
なにが出来るだろうか。
少年は必死で考えた。
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