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仮面 25
まずしたのは家探しだった。
男には悪いと思ったけれど、仕方ない。
男はありとあらゆるトラブルを扱うなんでも屋だ。
文字とおりありとあらゆるトラブルを、だ。
少年と出会ったきっかけもタテアキからの仕事だった。
そこから怪異に巻き込まれた結果、少年と男は出会った。
怪異に巻き込まれる、そういうことは良くあるらしい。
そしてタテアキに「才能」があると見込まれた男は良くタテアキに貸し出されているらしい。
「師匠」は基本的に怪異関係は肉弾戦以外は何もしない。
全部男に丸投げなのだと男がボヤいていた。
だから、なにかあるはずだ。
仕事用のなにか、が。
綺麗に片付けれられてるクローゼットの奥に刀を見つける。
男は意外とマメなのだ。
料理も掃除も本当は少年より上手くやる。
少年がここにいる理由を与えるためにやらせてるだけだ。
知ってた。
そして、男が何本か刀を持ってるのも知ってた。
怪異相手に使うばかりではないらしい。
「近距離なら銃より刀のが速いんや」
と男は説明してくれた。
それはどんな仕事をしているのだろう。
詳しくは聞いてない。
心配になるから聞けない。
ありとあらゆるトラブルの解決、が男の仕事なのだ。
男と師匠は「武道家」なのだと言っていた。
なんでも屋は生きていくための生業で、でもその生涯は武に捧げてるんだと。
1度真面目に話してくれた。
真面目に男が語るのは珍しい。
でもたしかにどんなに少年を抱いても、ほかに女を抱いてきても男は毎朝身支度を整え、形の稽古をしている。
素手、刀、二刀、棒術、屋上で練習しているのを何度も見た。
美しくて見蕩れてしまう。
男は誰より美しい。
その肉体も動きも何もかも。
「果てがないんや」
そんなに強いのに何故毎日練習するのかを聞かれて男は笑った。
ちょっと照れくさそうに。
その顔も好きだと思った。
とにかく、男は人間相手、そして、対怪異のための何か道具を持ってることは間違いなかった。
で、見つける。
明らかに御札が貼られた刀。
人型に切り取られた紙。
これは知ってる。
よくタテアキが使うモノだ。
前に室内に結界を貼った時の御札も見つけた。
少年に蟲姫様の加護をつける前に使っていたヤツだ。
それにお香も見つけた。
怪異を遠ざける効果があるとか言ってた。
あるだけのモノを取り出し、やれるだけのことをやると少年は決めた。
部屋に戻ればイガラシは泣いている。
「オレは無理・・・もう耐えられない・・・またサれたならもうダメだ・・・」
嗚咽している。
「オレはオレは・・・可愛い女の子が好きなのに・・・あんなあんな・・・」
イガラシは震えている。
思い出したのかビクンビクンと身体が痙攣している。
深くまで犯された、強い快楽を忘れ去ることはできない。
何度も何度も奥まで貫かれ、そこで深くイかされたのだ。
許しを請うほど。
忘れなくなるまで刻みつけられたのだ。
思い出すだけで、身体が焼かれる。
それはつらい。
少年はわかる。
少年だからわかる。
望まないセックスで深い快楽を与えられたならそれは深い傷になる。
快楽だけど辛い。
快楽だからこそ辛い。
少年は自分の本来の性的指向はわからない。
物心ついた時にはもう男達に使われていたからだ。
でも、女性を指向し、後ろで犯されることを考えたこともなかったイガラシがそうされて、激しいショックを受けているのは、わからないなりにわかる。
自分よりも辛いだろうな、と同情してしまう。
だが・・・。
でも・・・。
色々思うことはある、でも、たしかに。
これ以上イガラシの心は持たないことは確かだった。
「大丈夫・・・オレが、君を、守る」
少年は言った。
言って驚く。
対策を考えるまでは「諦めろ」と彼に言われているのに、自分がなんとかできるとでも?
何もかも1つマトモに出来ない自分が。
男の世話になるしかない自分が。
「助けて・・・」
泣くイガラシを少年は抱きしめた。
助けたかった。
どうしても。
イガラシは、泣いている過去の自分だったから。
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