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仮面 27
「開けてくれ、開けろ・・・開けろ・・・開けないかぁ!!!」
男が出したこともない怒鳴り声でソレが喚く。
激しくドアが叩かれ、振動か響く。
暴力でしいたげられてきた少年はその音や声に身体を震わせる。
でも。
従わない。
絶対に。
声はどんどんへしゃげていく。
うかならはさら!!!
かなはさはらか!!!
そして人語では無い言葉が響く。
「出ていけ!!」
少年は怒鳴る。
それは生まれて初めてのことだったかもしれない。
反抗は許されなかったから。
でも、怪異を拒否しなければならない。
この場はお前の場ではないことを教えなければならない。
拒否は有効な手段ではある。
通じれば、だが。
だが仮面の怪異もイガラシに自分を拾わせ、自分から部屋に入れさせたという手段をとっている。
それなりの手順は踏んでいるのだ。
今もドアを少年に開けさせようとしているのだし。
振り返るとイガラシがガチガチに震えていた。
何日も何日も犯され続け、色んなモノが限界なのだ。
今日犯されたなら「絶望」が身体と心に刻まれる。
少年はそれを知ってた。
だから。
少年は刀を握る手に力をこめる。
鉄、特に刃物を嫌う異形も多いと聞いた。
少なくとも、無駄ではないはずだ。
「来るなぁ!!」
少年は叫んだ。
だが。
突然イガラシの携帯が反応した。
唯一くつも履かずに逃げ出したイガラシが持ってきたモノだ。
携帯の音声での検索用AIが話し始める。
何の操作もしていないのに。
「どうぞお入りください」
携帯が少年やイガラシの代わりに答えた。
そんな。
そんな。
怪異は端末まで干渉できて、そして形態端末が侵入を許可するのも「入っていい」と言ったことにするのか。
それは狡い。
そんなのない。
だが。
ドアの鍵は施錠を解かれ、ドアがゆっくり回されて。
ソレはやってきたのだった。
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