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仮面 29
「ひぐぅ・・・」
少年は喉をそらす。
犯されていた。
仮面の舌は少年の穴から胎内の奥の奥を責めたてていた。
そんな奥まで入られたことはなかった。
人間のモノでは無理。
長く分厚く柔らかい舌だけが入れる、奥のさらに奥。
行き止まりをぶち抜かれる衝撃をこえて、さらに身体が動かなくなる感覚。
そこを執拗に舐められていた。
「ぐうふうっ!!!」
少年は爪先から頭まで弓なりになる。
爪先も指先も丸まる。
舌を締め付けていた。
搾るように。
胸も扱かれていた。
暖かい触手のような髪が少年の乳首をにまきつき、乳首を扱いているのだ。
性器を扱くように。
いや、もうそこは性器ではあった。
いつも男にいかされているのだから。
でも優しい男の指や舌とはちがって、仮面の責めはえげつない。
優しさなどない。
そこには欲望すらない。
執拗に快楽を与えてくるだけだ。
怪異にしてみれば快楽をあたえながら、胎内の環境を整えているのだ。
そう、菌類なのだ。
菌類が育ちやすい環境を作っているだけなのだ。
怪異にすればレイプですらない。
だがそんなことを考える余裕など少年にはない。
今少年は快楽に溺れながら、自分の中にある場所に逃げていた。
虐待を生きのびた人間なら持っている場所だ。
自分に何をされたとしても、それを切り離すことができる場所。
そこに入ってしまえば、どんなモノも少年には触れられない、
どんなに身体を好きにしようと、罵倒しようと、背中をタバコで焼こうと、誰も少年を傷つけられない。
快楽で責めさいなむ怪異であろうとだ。
少年は生き抜いたのだ。
過酷な日々を。
無力だった。
だが死ななかった。
戦ったからだ。
自分の内側に陣地を築き、自分を護り続けたのだ。
それは防衛戦で、撤退戦で、負け戦だったかもしれないけれど、一度も戦わなかったことはなかった。
少年は。
戦ってきたのだ。
だから生き延びた。
喘ぎ喚き、イキ続けながら、少年はその部屋に閉じこもる。
「本当の自分」 をそこで守る。
イガラシでは無理だ。
しらないから。
少年は生き延びてコレを身につけた。
自分の心を護るために。
暴力も快楽も。
本当の少年には触れられない。
閉じこもり護れ。
自分を護れ。
そこだけは誰にも触れさせるな。
それが少年の戦いで。
少年はその戦いのエキスパートで、エリートで、優秀な戦士だった。
「誰もオレには触れられない」
ドアを閉めてしまえ。
身体なんか快楽に与えろ。
別に暴力だっていい。
そんなものでは。
オレには触れられない。
「ぐひぃ・・・ひぎぃ・・・くぷっ」
だが身体は壊れたように性器は精液をこぼし続け、獣のように喚きつづけ、身体を痙攣させ続ける。
イキ狂い、泣き叫び、獣のように叫び続けて。
別にいい。
こんなのなんてことない。
ただ、思った。
男に知られたら。
嫌われるかな、と。
蟲に犯された時でも、少年の心配はしていても、それ程気にしてはいなかったけれど。
元々沢山の人間にこの身体を使われてきたのを知ってるのだし・・・でも、そんなのわからないから。
嫌われたら悲しい。
でも、同時にぼっとするかもしれない。
男に見捨てられる怖さからは解放される。
いつかはきっと。
男とはいられなくなるとわかっているのだから。
早い方がいいのかもしれない。
閉じた場所でそう思いながら、少年は同時に仮面に与えられる快楽に狂ってもいた。
自分を護りながら。
「ひぎぃ!!!」
穴の中で回転するような舌の動きに痙攣する。
人間では不可能な動き。
乳首の先端をほじられる。
ペニスの先の穴をほじられているかのように悶える。
何度も何度も脳がスパークする。
舌が引き抜かれまた奥まで一気にスライドする。
腸壁の襞が裏返される。
「ふぎゅう!!ぐひぃ!!」
少年は喚いた。
脚を開かされ、みだらな姿にされ、思いのままに舌と、触手に犯されながら。
慣れた身体は、尻を淫らに振り、その指は自分のペニスを扱いていた。
ペニスだけは触ってくれないから。
涎を垂らしよろこびながら、でも、同時に少年は引きこもっていた。
自分の中に。
だれも。
だれも。
触れられない。
例え、この身体を殺せても。
ここには誰も届かない。
少年は待っていた。
彼が頼りで。
そして、彼を信じていた。
人間で無いものに彼はとても誠実だから。
でも、ドアが思い切り開いて。
部屋に飛び込んできたのは。
彼ではなかった。
「この化け物がぁ!!オレのモンやぞ、それは!!」
怒鳴り声をあげたのは。
男だった。
驚きのあまり少年は閉じこもったところから、出てきそうになった。
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