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仮面 30
男は肩に抜き身の刀を担いでいた。
流石に今日はエンジン音が聞こえなかったけれど、車で帰って来てるから、駐車場から刀を抜いて走ってきたようだった。
警察に通報されちゃう。
少年は男のことを心配した。
また強制的に射精させられながら。
「ひぎぃ!!!」
少年は汚く喚いて白濁を男の前で放つ。
広げられ、舌が出入りする穴を見せつけるような姿勢で天井からの触手のような髪に吊るされながら。
胸も触手に弄られて、臍さえ触手はまさぐっている。
腹の薄い皮膚越しに、浮き出て蠢く舌の形を触手がなぞり、腹の中からそして外側から刺激を少年に与えていた。
イキ続けることを身体は止められない。
白目を剥いて、背中を反らして涎を垂れ流す。
痙攣し続ける身体は電気でも流されているかのよう。
男が見てる。
閉じ込められてる中で少年は泣く。
閉じこめられてたら誰にも届かないはずなのに。
誰にもここにいたら傷つけられられないはずなのに。
「泣くなや・・・お前は悪ない、泣くな・・・」
困ったように男が言ったので、自分が閉じこもった中だけでなく、本当に泣いてると知る。
「待っとれ、すぐ自由にしたる」
男は刀を握った。
瞬く間に少年に巻きついていた触手は斬られ、舌も斬られる。
ベッドに落ちた少年の身体から、斬られた舌がのたうち回りながら抜けて、動かなくなる。
腕や脚、そして乳首に絡んでいた触手も解けて少し蠢き動かなくなる。
男は少年とは全然違った。
触手に巻き付かれ取り上げられていた刀も触手を切りさき、落ちてきたものを片手で掴む。
両手に刀を持ったまま、踊るように動いた。
直ぐに再生し、攻撃してくる触手や舌を絶え間なく切り裂く。
そして、天井の仮面目掛けて、右手の刀を投げつけた。
仮面に刀は刺さり、天井に突き刺さる。
仮面の動きが止まったところで、もう片方の刀で男は仮面を真っ2つに切り捨てた。
カコーン
カコーン
仮面は床に落ちた。
男はそれにポケットから出した札を貼る。
仮面はビクピク蠢いたが、消えた。
札も燃えた。
「消えた?」
少年が思わず呟く。
「いーや、嫌がって逃げただけや。明日にはもう効かへん。慣れよる」
男がやれやれと言った調子で言った。
慣れるんだ、少年はそう思った。
カラス避けみたいだな、みたいなことを。
ゆっくり男が少年をへと振り返る。
少年は小さくなる。
自分の精液と仮面の怪異の唾液で汚れた身体を男から隠そうとするかのように。
男の目が光ってた。
いつもとは違う表情。
その意味が分からなくて少年は怯えた。
「まあ、まずは・・・」
男は光る目のまま近づいてくる。
少年は。
こんなに怖かったのは、初めてだった。
虐待を受けていた日々よりも。
怖かった。
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