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仮面 35

「ごめん・・・ごめん・・・オレのために・・・」 イガラシが泣く。 少年のペンダントを身につけている。 イガラシはもう耐えられない。 だからここからは少年が代わる。 それは少年の意志だった。 「いいんだ。怪異にとってあれはセックスじゃない。それがオレには分かるから」 少年は微笑んだ。 少年はレイプについては誰よりも詳しい。 怪異の行為には人間が持つ、薄汚い精神は感じなかった。 本当に、菌が繁殖するための苗床作り以上のものは何もないのだ。 「そのガキが使えない以上、お前を利用しておびき寄せるしかない。ええな?」 彼が言った。 意志を確認してくれているのだ。 少年は頷く。 構わない。 本来はイガラシが怪異のターゲットだ。 だが、イガラシには蟲姫の加護がついている。 少年のペンダントを身につけているから。 そして、そのイガラシの傍には怪異と何度も性交したため、彼らに見つけやすく、そして彼らに馴染んだ肉体である少年がいる。 光って見えるくらいだろう、と彼は言う。 怪異達は少年に引きつけられずにはいられないだろうとも。 少年は怪異達にとって最高の餌だった。 怪異と交わったことで、怪異達が好むようにさらにカスタマイズされているからこそ。 人間の男の精を求める全ての怪異のための餌。 知性ある怪異なら攫われ閉じ込められ、婚姻をむすばされただろうけれど、知性ない菌や蟲は襲ってくるだけだ。 「正直、術士にとってはこれ程の餌は有り得ないんや。しかも、蟲姫さまの加護まであるし。言うとくが、お前の身体は蟲姫さまのモノでもあるんやからな。菌何ぞにはやらんぞ。蟲姫さまのお子を育てる為の苗床のんやからな」 ブツブツ彼は言う。 「お前が死んだりしたら、蟲姫さまに新しい夫たる苗床を探さないあかんやないか。蟲姫さまのお気に召すような人間を探すのはな・・・」 彼的にも色んな責任があるようだ。 彼としても少年に死んでもらったら困るのだ。 「ホンマにええのか?その男の前で、その・・・色々されても」 ちょっと真っ赤になって彼が言った。 表情は髪に隠れて見えないが、血の気のない程白い肌が染まっているのはわかる。 恋人に色々されているわりには純情なのだ。 「オレは大丈夫」 少年は頷く。 男は。 自分を。 嫌わない。 それだけは確信になっていた。 男に何度も囁かれ、そう教えらたから。 男に話したり、男の目の前でするなら、それは。 男に抱かれるのと同じ。 「エロいとこ見せてや」 男が下品に笑った。 「ホンマゲス野郎」 彼は吐き捨てた。 が、納得したようだった。 「コイツ嫌んなったら俺んとこ来いや・・・化け物屋敷やけど 」 そうまで言ってくれた。 彼の恋人であり、男の弟でもあるあの人からも言われている。 師匠も「何とかしてあげるからね、嫌になったら言いなさい」といってる。 だけど。 少年を全て受け入れてくれるのは男だけだと知っている。 少年はイガラシを助けたかった。 自分の力で。 その為に自分の身体を使うことも、男は気にしないのだ。 それどころが自分としているのと同じだとさえ言ってくれる。 そんな人、他にいない。 少年は笑って首を振る。 自分からは離れない。 男が要らないというまでは。 「じゃあ、始めるで、今日で終わらせる」 彼が宣言した。

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