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仮面 37
「穴も見てもらおうか、オトモダチに。トロトロになるとこ」
ローションを穴に注ぎこみながら男が言う。
尻を自ら突き出している少年は、男が穴を開くようにしてイガラシに見せつける動きに、感じてまた鳴く。
くちゃくちゃと音を立てて動く指と、少年が揺らす尻にまたイガラシは唾を飲む。
イガラシは男には興味はない。
でも、もう。
奥の奥までその穴で感じることを知っているからこそ。
男の指が動く度に、イガラシの尻が無意識に揺れていた。
男は少年の尻にもある火傷を愛しげに舐めながら、指で穴を弄る。
「柔こうて、こんな締め付けて、ホンマ可愛いわ」
男は音を立ててそこを弄る。
時折、酷く感じるところを指で擦りながら。
イガラシの前で少年は鳴きながら夢中で尻を振る。
これは違った。
色んな連中にされてきたことと違った。
見せつけて支配犯されて犯されているのとは違った。
まあ、間違いなく男は楽しんでいるが、それは少年のためなのだ。
楽しんでいることも含めて、少年のためなのだ。
いや。
この男だけは。
少年を丸ごとうけいれられ、それを苦痛にも思わない。
人間達に犯されつづけてきた過去を受け入れられる人はいるかもしれない。
でもこの先もある、怪異に狙われ、犯されること、そして、こんな風に我が身をつかって誰かを救うためとはいえ、自分から犯されようとする少年を受け入れられるのはこの男しかいない。
しかもそれすら楽しみ、愛おしさに変えてしまえるのは。
だから、耐えるために快楽に逃げ、犯されながら自分の心は閉じ込めて守ったあの頃とは違う。
少年も楽しんだ。
だって男が楽しんでいて、そして。
男は絶対に少年を蔑まないから。
この男だけは。
どんな少年も受け入れる。
嫉妬や独占欲すら、楽しみながら。
「ああ、可愛いなぁ」
男は火傷だらけの尻を齧った。
指は執拗にいい場所を抉り、また少年は声をあげて達していた。
飛び散る精液。
「可愛いわ、ホンマ。ぶちこみたいけと、またそれは後でな」
男は笑って少年にキスをした。
いやらしいキスをしながら、出したばかりのペニスを弄られ、少年は痙攣する。
先の穴ばかり責めるのは、少年が仮面にされたとを告白したからだろう。
「可愛いと思わへん?この先っぽの穴を虐められるのがコイツ大好きやねんて」
イガラシにそれを見せつける。
もうイガラシは耐えられなくなっていた。
スボンを下ろして穴を弄り、性器を扱いている。
乳首も尖っているだろう。
イガラシの身体は怪異に散々快楽を教え込まれ続けてきたからだ。
怪異に犯せされることに耐えられないけれど、でも、身体は快楽を欲しがらずにはいられない。
そうなってしまった。
「可哀想やど、お前もう女は無理やろな。相手してくれる男みつけろや・・・コイツを可愛がれるオレみたいな男をや」
男は珍しく同情しているようだった。
それは少年もそうだった。
同情する。
自分の性的指向を知る前に男達に使われてきた少年にはセックスは男性と、そして挿入されるのが当たり前だが、イガラシは違う。
可愛い女の子とセックスしたかったのだ。
探せば、おもちゃをつかって後ろを犯してくれるようなそういう女性もいるのかもしれないが、それらはイガラシの本来の指向からは離れる。
イガラシにとってセックスはどう転んでも納得のいかないものになっている。
快楽はあったとしても。
「まあ、男もええぞ、とは言わんな。・・・コイツやからいいんやし」
ちょっと悩みながら言う、男の指はそれでも執拗で出したばかりの先ばかりを責められ、少年は精液ではないものを吹き出した。
「ひぃぃん・・・」
ガクガク震える身体を抱きしめられる。
少年の緩んだ穴と濡れた性器をイガラシに見せつけ、男は笑った。
「まあ、運がよければ誰かに会えるやろ。運が無くてもええバイブが今はあるし、誰かにバイブ代わりになってもらえる遊べる場所もあるらしいしな」
慰めているつもりらしい。
イガラシも泣きながらイっていた。
可哀想なイガラシ。
イガラシにはまだ受け入れられない。
受け入れるも受け入れないもなかったからこそ、少年はイガラシに同情した。
イガラシにも自分のような出会いがあればいいと思った。
笑って人前で少年をイカせることを楽しむ男と出会って少年は救われている。
この男は。
この男だからこそ。
少年にとっては最高で完璧な人だった。
イガラシもこんな出会いを、と願った。
それにはイガラシには異論だらけだろうとは思いたいもしないで。
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