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仮面 39
ふしゅる
ふしゅる
呼吸音がした。
部屋の窓にべったりとした手形がいくつもつく。
ドアが乱暴に叩かれる。
かなはさら
かなはらさ
金切り声や唸るようなひくい声が響く。
「来よったわ!!」
真っ赤になってベッドで行われていたことに背を向けて蹲って居たはずの彼が元気良く飛び起きた。
生き生きしている。
細かく痙攣して、蕩けきり男とキスしている少年にも、泣きながらまたイクイガラシにも今では動じない。
彼は怪異に関することにのみ、全ての関心が向くのだ。
例外は恋人くらいだろう。
「俺の予想とおりやな。俺の作った逆結界が予想通りに作用した!!」
彼は歓喜している。
彼は少年を餌にして怪異を呼び寄せた。
ただし、ある種の怪異のみ。
でないと、たとえ途中で蟲姫の加護を得たペンダントをつけても、その加護が効かない怪異に少年が骨まで喰らわれる可能性があるからだ。
もちろんそこにいる男や、イガラシや彼にもだ。
蟲姫の加護がきき、なおかつ、高度な知性を持たない、そして物理攻撃がまだ有効な怪異を呼び寄せる必要があった。
「タテアキが天敵に蟲を喰わせてたけどな、ああはいかんし、そんなに都合のよい契約普通はない。アレは運が良かっただけや。でも、怪異に怪異を向かわせるのはアリや。仮面茸に怪異をぶつける。対消滅や」
複雑そうに彼は言った。
タテアキのやり方に習うのが嫌だったのだろう。
もっとスマートにやりたかったらしいが、イガラシがもたない以上これしかなかったらしい。
少年がその案を受け入れることにも複雑そうだった。
少年は怪異達にその身体を貪られることを承諾したのだ。
そうじゃないと奪い合いは起こらない。
怪異同士の殺し合いは始まらない。
餌の奪い合いを起こすのだ。
「ええんか?」
心配そうに聞かれて少年はこくりとうなづいた。
助けたかった。
きっとそれはイガラシではなく、イガラシをどうして見える幼い自分なのだろうけど。
「お前は最高級の餌やし、最高級の花嫁にもなれる。お前さえよければ良い怪異の嫁に紹介したんやで?もう蟲姫様の婿やからあかんけど。そんな男より、怪異のがよっぽど一途に大事にしてくれるのに」
彼は残念そうに言った。
少年は首を振る。
男じゃないと。
嫌。
「お前もええん?」
男に複雑そうに聞く。
「かまへん。こうなりゃたのしむだけや。3Pよりもおもろいわ」
男は笑ってた。
本気だと知り、彼はドン引きしていた。
「ただし、コイツの生命に関わるなら話は別や・・・」
男が真顔になる。
「・・・万が一の時のためにあんたがいるんや。基本的に今回呼び寄せる怪異は精気にしか興味ない。やり殺される以外は有り得ん。それまでに殺しあって終わるはずや」
彼は言ったのだ。
そして、今計画は彼の思う通りになったらしい。
「手まもり蛾にひとつ脚虫や、予定とおりや!!」
彼は興奮して叫ぶ。
「怪異は許可なく入れへん、さあ、許可してやれ、入れてやるんや」
彼は少年に言った。
蕩けきった身体で、でも、中の穴が物足りなくて、ぐずりながら少年はその指示に従う。
男が耳元で囁く声と言葉に感じて震えながら。
「化け物どもにいじめられるお前はきっと可愛い。オレにみせてや・・・」
男はそう言って。
少年はそれに微笑んだ。
そして、言った。
「入っていいよ・・・」
自分から穴を指で広げて言った。
クチュクチュと音を立てるそこは間違いなくたのしむための性器だった。
そこにもう。
何でもいいから欲しかった。
少年も。
楽しんでいた。
男が楽しいなら。
男が自分を嫌わないなら、何だって楽しめる。
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