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【課長視点】俺の可愛い部下(4)
半ば無理矢理合意を取り付け、俺と奏太は付き合うことになった。なかなか「うん」と言わなかったが、奏太もあんなパーティーで出会いを探しているくらいなんだから俺と付き合えてラッキーなくらいだろう。
俺はとにかく気分が良くて、翌朝も早くに目覚めたのでシャワーを浴びた後朝飯の支度にとりかかった。普段はそこまであれこれ朝から調理したりしない。
だけど奏太の昨夜の食べっぷりを見ていたら何か作ってやりたくなった。
奏太の身体はスーツ越しにもまぁまぁの筋肉が付いているのはわかっていたが、脱いだら想像以上の仕上がりだった。どうやって保ってるのか知らないが、昨夜聞いた限りあまり食事には気をつけていないようだ。
今後は俺が栄養管理もしてあげよう。
奏太は昨夜のことを若干戸惑っているようだが、心配はいらない。俺は処女を奪ったからには遊びじゃなくちゃんと付き合うから安心して欲しい。
付き合うのをやめるなんて言い出したけど、最終的にはうやむやにさせた。
この日は今後奏太がうちに来たときに不便じゃないように、部屋着や日用品を買い揃えた。
夕食の料理をぺろりと平らげ酒も飲んだ奏太は、リラックスしてくれているようで俺の腕の中にすっぽりと収まってテレビを見ていた。
酔って上気した頬があまりにも美味しそうだったのでソファで優しく身体を触ってやったら気持ちよさそうにもたれかかって来る。従順な大型犬飼うのってこんな感じか?
恋人を甘やかすのって思っていたより楽しいじゃないか。どうして今まで気付かなかったんだろう。
その後はベッドに連れて行ってきっちり可愛がってやった。
初めてだった昨日より慣れたからか、積極的に求めてくれて俺的にも満足だ。奏太はベッドでも飲み込みが早くて優秀だ。仕事だけじゃなく、セックスでも無理難題を出したくなる。
30歳越えてからは特にセックスは性欲発散の作業みたいな感覚になりかけていたが、相手の問題だったのだろう。俺は久しぶりに色々楽しみたい相手と出会えたことで期待に胸を膨らませた。
◇◇◇
長いこと忘れていたが、俺には嫉妬すると興奮して勃起するという奇妙な性癖があった。
なんで忘れていたのかって、それは嫉妬するほど執着する相手にここ最近出会っていなかったからだ。そして奏太と付き合うことになってその感覚を思い出していた。
奏太が仕事を手伝ってもらっている同僚の女の子とあまりにいちゃいちゃしているのが目について俺は苛立った。
普段は女相手に嫉妬したりしないのだが、そのままじゃ股間もおさまらないくらいだったので奏太をトイレに引っぱり込んでキスしてやった。奏太の顔が真っ赤になって涙目になるのを見ていたら途端に気分がすっきりして勃起もおさまった。
トイレから出たところ、廊下の物陰から中の様子を伺っている人物がいた。
一瞬個室でいかがわしい事をしている気配を会社の誰かに悟られたかと肝を冷やしたが、相手が北山だったので胸をなで下ろした。
彼は俺がゲイだと知っている。男とキスしていたのがバレていたとしても問題はない。
むしろ、俺が奏太と付き合っていることを知れば奏太に言い寄ってくることも無いだろう。あいつは気に入った相手に見境なく手を出そうとするから油断ならないんだ。
そんなこんなで俺と奏太の付き合いは順調で、週末は大体俺の部屋に泊まってもらう生活になっていった。
しかしそんなある日、奏太の兄から連絡が来た。金曜の夜にまたパーティーがあり、人の集まりが悪いから助っ人として参加してくれという。
俺は奏太と付き合い始めたから嫌だと断ったんだが、付き合うのを許可する代わりになんでも言うことを聞くと言っただろうと脅された。そういえばそんなことを約束させられたんだっけな。俺は仕方なくパーティーに参加した。
「悪いわね。宮藤くんならただ突っ立っててくれるだけでパーティーが盛り上がるから。よろしく!」
「これで最後にしてくれよ。もしこんな場に来てるのが奏太にバレたら悲しむからな」
「やだぁ、塩対応で有名な宮藤くんが奏太にそんな気ぃ遣ってんの?!はー、聞きたくなかったわぁ」
その後結局このパーティーに出たことが奏太にバレて「ヤリちん男」とか「たくさん彼氏いるならそっち行け」なんて言われて混乱した。
彼氏がたくさんってなんの話かと思ったら、奏太によからぬことを吹き込んだ男がいたようだ。
そいつは日下部といって、奏太をしつこく追い回して飲みに誘った挙げ句部屋にまで押しかけようとしていたのだ。
その男を追い払えたのはよかった。しかし先日俺がパーティーに参加したことについて奏太に追求され、新木兄と高校の同級生だったことを打ち明けなければならなくなった。
するとそれを知った奏太は俺と新木兄がグルで奏太を騙していたと勘違いして怒ってしまった。俺がいくらなだめようと必死になっても警察を呼ぶとまで言って聞かなかったので一旦距離を置くことにした。
付き合ってから日が浅く、信頼関係が構築出来ていない状態だったところへ誤解が重なってしまった。俺はいつでも週末家に来るようにと連絡だけ入れて、しつこく追うことはせずに待つことにした。
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