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【課長視点】俺の可愛い部下(5)
しばらく奏太からの連絡を待っていたが、ひと月ほど経っても送ったメッセージは既読にすらならなかった。
いつもの俺ならこんなに一人の相手を待ったりしない。来る者はより好みするし、去る者は追わない主義だ。しかし奏太以外の奴を抱く気にもならず、ただ週末は腹を空かせた奏太がひょっこり現れるかもしれないのを期待して料理をしたり掃除をして過ごす日々を送っていた。
気がかりなのは会社で最近奏太が北山と一緒にいるのを目にするようになったことだ。俺の男だとわかっているから北山はすぐに手を出すことは無いとは思うが……
それに北山は高身長のイケメンだがああ見えて男相手にはバリネコだ。奏太ももう後ろへの刺激がないと物足りないくらいには教え込んだから、万が一にも2人がそういう関係にはならないだろうという自信はあった。
俺があれだけ入れ込んで面倒を見ても未だに付き合ってることに恥じらいを見せる奏太だ。(セックス以外では清楚なんて最高か?)北山のいい加減な押すだけのアプローチではなびかない……はず。
そんな中、また新木兄から連絡が来た。俺はつい不機嫌な声が出てしまう。
「パーティーの助っ人ならもうやらないぞ」
「違うわよ。でもちょっとそのパーティーの件で相談したいことがあるの。見てもらいたいものがあるから今から会えないかしら?」
「ああ?今からだって?」
俺はもう料理の仕込みまでやり終えていたので、どうせ奏太は来ないだろうし二人分の飯が無駄になるのは勿体無いので新木兄を自宅に呼んだ。
「お邪魔しまぁす。やだ、イメージ通りのシックな部屋ねぇ。いい匂いするしなんか腹立つわ~」
「なんで腹立てられなきゃならないんだよ」
「あ、ごめんごめん。ていうか宮藤くんって料理するのね」
「するだろ。誰でも」
新木兄は部屋を見回して言う。
「あら?今日奏太は来てないの?」
「あー……まぁな。ちょっと……怒らせたっぽい」
これを聞いた新木兄が黙っているわけもなく、料理しながら洗いざらいことの経緯を聞き出された。
「はーん、それでブチ切れてあの子私にまで電話してきたってわけねぇ。ちょっとお馬鹿なのよね。思い込み激しいっていうの?ほんと人の話ちゃんと聞かないのは昔っからなのよね。それにしても私と宮藤くんが結託して奏太を騙すだなんてどうやったらそんな発想になるのよ!ほんとおかしい。あはは!」
「笑い事じゃないんだよ。せっかく仲良くやってたのに新木がパーティーの助っ人なんて頼んでくるからこんな面倒なことになったんだろうが」
「ごめーん!でも、恋は障害がある方が燃えるじゃなーい?ホホホ!」
こいつ、他人事だと思って適当なことを言いやがって……
「新木、性格悪くなったな。昔はもっとおとなしそうだったのに」
「ふん!あんたに言われたくないわよ。せいぜいうちの弟に振り回されるといいわ。これまで調子に乗って男に冷たくしてきたツケが回ってきたのよ~」
「なんだよそれ」
「呪いよ、呪い!」
「怖ぇよ」
「で、何か手伝う?」
新木は腕まくりしてキッチンに来ようとした。
「いや、いい。料理できるまでそこ座って待っててくれ」
冷やしておいたローストビーフを冷蔵庫から出して切ろうとしたとき、インターホンが鳴った。何か配達されるものなんてあっただろうかと思いながらモニターを見たらそこには奏太が立っていた。
「え……?」
俺は驚きとあまりの嬉しさで気が動転しかけた。しかし新木兄の手前表情に出すことはせず平静を装って通話ボタンを押した。
◇◇◇
なんとなく気恥ずかしかったのと、料理の仕上げがあったので玄関に出るのを新木兄に任せた。奏太の反応も怖かったのだ。
まだ怒っていたらどうしよう?
この俺がこんなことでビビるなんて情けない。
しかし久々に家を訪れた奏太は子犬のような目をして俺を見た。よかった。どうやら俺を罵りに来たわけじゃなさそうだ。
しかも腹ペコでやってきたらしい。料理ができるタイミングで現れるなんてやっぱり奏太は天才だな。愛しさがこみ上げて、新木兄がいなかったらすぐに抱きしめてキスしたかったがなんとか我慢した。
その後料理を楽しみ、新木兄からパーティー客による苦情の件を聞いた。
なんとそのクレーマーは奏太のケツを追いかけ回していた日下部だった。
この日下部が余計なことを奏太に吹き込んだせいでえらい目にあったっていうのに更に何してくれてるんだよ。しかも可愛い俺の恋人兼部下にストーカーまでしてくれるとはいい度胸だ。
お前にぴったりの人間を差し向けてやる。
◇◇◇
こうして俺は日下部に思い付きで北山という刺客を送り込むことにした。
北山に事情を話すと案の定興味を示した。彼は一風変わった男を好む。自分からは相手を束縛しないなどと言うが、実は束縛されるのが大好きなんだと言っていた。こちらから聞いてもいないのにあいつは勝手に自分のことを話してくるんだ。それによると昔付き合ったヤンデレ彼氏のことが忘れられないらしい。(ちなみにそいつは別れた後新しい恋人との間で痴情のもつれにより刃傷沙汰まで起こしたんだとか)
奏太が日下部をおびき出し、作戦通り北山が日下部を強引に連れ去ったとのことで一安心だ。その後どうなったか来週打ち上げの飲み会を開くことになっているからそこで聞くとしよう。
ソファで奏太にキスしたら気持ちよさそうにトロンとした目で俺を見てくる。たまらなくなってベッドに誘ったが彼がこう言った。
「やだ……ここでして……」
くっーーー。
俺はそこそこ綺麗好きなんで、リビングでセックスなんて絶対に御法度だと思ってる。しかし俺を離すまいと足を絡みつけて来た奏太に「好き」と耳元で言われて俺は負けた。
「今回だけだぞ」
「うん……もう我慢出来ない」
これでノンケだって?誰が信じるんだよ。男を誘うのがうますぎるだろ!
アナルを舐め解した後ゆっくり挿入すると奏太は俺にしがみついた。いやらしく腰を揺らしながら喘ぐ。
「あっ、気持ちいいっ」
付き合った最初の頃彼は俺にゲイだと嘘をついていたので、セックスのときも多少戸惑いや恥じらいがあった。しかし今はもう奏太も快感を得るのに遠慮が無くなっていた。
「もっとして、暁斗さんそこ♡あっ」
「ここか?ほら、どうだ?」
奏太の感じる所をゴリゴリ擦ってやると声が一段と高くなる。
「んっ、いい!あっ、あっ♡どうしよう気持ちいっあぁっ」
頬を染めながら潤んだ目で見られるとそれだけで痺れそうなくらいの快感を味わえた。
「可愛いよ奏太。ほら、イッて?」
さらに腰使いを激しくすると奏太は首を振りながら余裕のない声を上げた。
「あっ、だめそんなにしちゃ……!ああっイク、もう出ちゃう!はぁっあっ♡♡」
後ろを突きながら性器を手で覆うようにして扱き上げると奏太は感極まった声を出して達した。温かい粘液が手のひらに広がる。
ゴム無しでしているので俺は射精せずにペニスを引き抜いた。
「俺を煽ってリビングでこんなことさせられるのなんて奏太くらいのもんだよ。さあ、続きはベッドだ。思う存分いじめてあげるから覚悟して」
「えっ……そんなぁ……」
奏太は涙目で俺を見上げた。怯えたふりをしているが、目の奥にちょっと期待も混じってるのを俺は見逃さないからな。可愛い奴め。
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