5 / 53
第5話 縁再び(1)
「あ」
「あ」
翌週の二十時頃、隣り合った席で、碧は再び武彦に遭遇した。
「偶然ですね、森宮さん」
「ほんとですね」
驚いた碧に、武彦が遠慮がちに言った。
「よろしければご一緒しませんか? 俺は途中で寝ちゃうかもしれませんが」
「いいですよ。肩、貸しましょうか?」
「いえ……! そこまでは申し訳なくて……」
(この人、何しに映画館にきてるんだろ?)
今日も先週と同じ『グッドマン』シリーズのリバイバル上映がかかっている。確か先週、武彦もファンだと言っていたが、眠ることを前提とした様子から、碧はその目的を訝った。
その日も一時間ほどすると、隣から静かな寝息が聞こえてきて、碧は苦笑しつつ、映画のスクリーンに大写しの主人公に身を任せた。
その日は手を握られることはなかったが、かわりに上映後に目覚めた武彦に、食事に誘われた。
ともだちにシェアしよう!