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第13話 お泊まり会(1)

「良かった。今日届いたはいいけど、碧に断られたら悲惨なことになるところだった」  ぼやいた武彦に続いてマンションの一室に上がった碧は、玄関の横の壁に思わぬものを発見して声を上げた。 「うわっ、すごいでかいポスター。これどうしたの? 武彦」  シューボックスの上に飾られている『グッドマン』シリーズの七作目のポスターに、テンションが上がってしまう。 「ネットで限定品買った時に抽選で当たったんだ。寝室にはもっとでかいのがある」 「ほんと?」 「見る? ていうか見て。俺、自慢したい」  武彦はキッチンカウンターに牡蠣の入った発泡スチロールの箱を置くと、寝室のドアを開けた。間接照明のオレンジ色の光の中、ベッドサイドに『グッドマン』のA0サイズのポスターが浮かび上がる。 「えっ、これ監督のサイン入ってるじゃん! すごい……いいなあー……」  碧はポスターを見て、武彦が本当にかなりコアなファンなのだとわかり嬉しくなった。しかも武彦は碧と同じく、派閥にとらわれないで自由闊達に意見を述べる、わりと珍しいタイプのファンなのだ。 (でも寝室を覗くなんて、ちょっと踏み込み過ぎたかな……)  背後にいる武彦を意識してしまって、顔が見られなくなった碧は、武彦の横をすり抜け、話題を変えた。 「牡蠣食べよう、牡蠣!」 「了解。七輪出すぞー」  バルコニーに七輪を出して、牡蠣を焼く武彦の図が妙だった。Tシャツに短パンで、なぜか頭にタオルを巻いている。聞くと、このスタイルが一番牡蠣を美味しく焼けるらしい。 「なんだそれ、広島人、変」  くすくす笑いながら武彦と一緒に紅葉おろしで食べた牡蠣は、絶品だった。 「うまー、これビールがすすむ……」 「日本酒もいけますよ、碧サン」 「勧めないでよ。僕、弱いんだから……」 「いいよ、潰れても。泊まってっても大丈夫だから」 「さすがにそうはいかないよ……明日も仕事だし……牡蠣旨いなぁ……」

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