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第14話 お泊まり会(2)

 結果、酔いに酔ってしまった碧は、エアコンの効いたリビングのカウチで丸くなった。正直、こんなに酔ったのは久しぶりで、全く思考が働かない。ただ、ゆらゆらして気持ちいいのは牡蠣のせいだと思う。 「泊まってくでしょ?」  そのうちに、いつの間にか片付けを終えた武彦がカウチに手をついて確認してきた。紅葉おろしに加え、牡蠣ご飯の〆は最高だった。 「らいじょぶ……かえれる……」 「駄目だよ。さすがにこのまま帰せないし」 「れも……」  半分しか開かない目を、どうにか持ち上げる。 「呂律回ってない。静かに酔うタイプなんだな、碧って」 「牡蠣はもう無理……」 「ごちそうさましたでしょ」  碧のたわごとに付き合ってくれながら、武彦は碧の肩を掴んで、脇の下に手を入れた。そのまま膝裏に腕が伸びたかと思うと、持ち上げられたが、安定感があるせいで、全然不安を感じない。 「武彦」 「ん?」 「身長何センチあるんだっけ?」 「百八十七だったかな」  どうりで百七十三センチの、わりと痩せぎすの碧を持ち上げられるわけだと思った。 「このまま運ぶけど、暴れないでよ?」 「ん。うん……」  ふわりと持ち上げられて、体格差に少しコンプレックスを刺激される。あの『グッドマン』のポスターのある寝室に連れていかれるのだと思うと、内心、ちょっとわくわくした。  ベッドに下されると、目を閉じたままの碧は、深い眠りへと落ちていきかけた。  その刹那。  ふと髪をかき上げられたかと思うと、何かが唇をかすめた気がした。 (キス……? された……?)  だが、一瞬のことで、その温もりがただの願望なのかもしれない、と思う。 (駄目だ……武彦でこんなこと……思うなんて……)  碧は全てを夢だと思い込み、湧き上がる罪悪感に蓋をして、とりあえず眠ることにした。

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