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第45話 愛を交わす(1)
ベッドに座らされると、すくい上げられるようなキスをされた。
「碧……」
寝室の『グッドマン』のポスターが、オレンジ色の間接照明に照らされている。碧は走り出した鼓動がおさまらず、うなじまで火照らせ、身じろいだ。
「碧、このまま、するけど、いい?」
「うん……」
跪いた武彦の瞳の中に、発情した自分を確認する。武彦もまた碧と同じように、切羽詰まった表情をしていた。
「武彦」
「ん?」
優しく問い返されて、碧の心は震えた。少しだけ甘えたくて、秘密をひとつ、開示する。
「好き、だから……、何か話してほしい。その、僕、初めてで。緊張でどうにかなりそうだから」
ライトに照らされのしかかってきた武彦が、碧の言葉にふと動きを止めたのを見て、言わない方が良かったかもしれないと碧は後悔した。
「あ、あの……っ、今の、冗談……」
次第に声が小さくなる。武彦は一瞬、凶暴な目をしたあとで、ため息をついて碧から退いた。失望させたのだろうか、と碧が身体を起こすと、武彦はその隣りに座り、ため息をついた。
「なぁ、碧」
「うん……?」
「もう無しにしよう、隠し事とか。俺も正直に話すから。碧が下手な嘘とか、隠し事とか、しなくていいように、ちゃんと話す」
武彦は膝に両肘を乗せて前かがみになった。
「正直、嬉しいよ。俺の碧が処女だって、どんなご褒美かと思うよな」
「め、んどくさく、ない、の……?」
いい年して経験がないことを、笑われたらと思うと言えなかった。碧がおずおずと問うと、武彦はやにわに碧の前髪に触れ、笑った。
「全然。こんな可愛い人が、可愛いこと打ち明けてくれてるのに。ちゃんと俺がそれに相応しくなれてるか、自省はするけど。むしろ、俺が相手でいいの?」
「い、いい……っ、きみが、いい……」
慌てて言うと、武彦は少し照れて俯いた。
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