「碧が白鳥さんて人と楽しそうに話してたことに、俺、未だに嫉妬してるんだ。俺の知らない碧を知ってる人がいるってだけで。変だろ？　でも正直、相当堪えた。碧も、俺に思うことがあるなら、言って欲しい。聞くから」 　振り返って碧を覗き込む武彦の、真摯な目が碧の内側に明かりを灯す。身体の芯がじわりと燃え上がり、碧は武彦に対して静かに欲情するのを感じた。 「これ、が、夢だったら……死ぬほどしんどい」 「うん……？」 「きみとこうなりたかったから……。きみが、従兄弟と手を繋いでるのを見た時、腹の中が捩れそうだった。悔しくて、哀しくて。従兄弟だってわかっても、やっぱりちょっと納得してない。だって」 　涙声になりながら、一歩を踏み出す。きっと誰かを好きになるのは、本気で好きになるのは、こういうことなのだと思いながら。傷だらけになりながら、それでもその人の胸に飛び込んでゆくことしかできない。 「僕の知らなかった武彦を、たくさん知ってて、それはどうしようもないことだってわかるけど、羨ましい。嫉妬、したくないのに苦しくて、武彦のことになると、制御できなくて。そんな自分に失望する。きみを好きなだけなのに、どうして、って……」 　膝の上で拳を握ると、武彦が手を重ねてきた。 「碧、独占欲、強いんだ？」 「そ、そうだと、思う……」 　おずおずと認めると、武彦は重ねた手を指を交差する形で握った。 「俺と同じだ。てか、本気になった人が現れて、初めて自分に独占欲があることに気づいたよ。知ってた？　独占欲が強い人って、性欲も強いんだって」 　息を詰めた碧に、武彦は何でもないことのように続けた。おずおずと碧が顔を上げると、赤面しながら優しげに笑んでいる武彦がいた。