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第51話 暁(1)
ふと目を開けると、空が白みはじめていた。
今日が休日だったことを思い出して、碧は安堵のため息をついた。武彦はまだ眠っている。起こさないように静かに身じろぎすると、関節のいくつかがガタついていた。昨夜の交わりの激しさを思い出し、まだ目を閉じている恋人を見つめた。
(──しちゃったんだ、僕、武彦と……)
身体のきつさはあったが、愛の深さのようで嫌じゃなかった。
昨夜は何度果てたか数える余裕もなかった。唇が腫れるほど貪られ、碧も自ら腰を振り、武彦をねだった。独占欲のせいで、あるいは武彦の求める強さのせいで、碧は獣のようになったが、後悔はなかった。
青一色の部屋を見回すと、寝室の壁に『グッドマン』のポスターが飾ってある。途端に、武彦に牡蠣パーティの晩に連れてこられたことを思い出した。静かに眠っている武彦をしばらくじっと凝視していた碧は、やがてその額にそっとキスを落とした。
「……はよ」
碧が身体を起こした時、武彦の瞼がゆっくり開いた。
「起きてた?」
眠っている間にした悪戯が恥ずかしくなった碧が尋ねると、武彦は伸びをしてから、明るい目で碧を見た。
「いや……寝てたけど、今起きた」
武彦の両足が、碧のそれに絡まっている。その体温が心地よくて、碧は思わず微笑んだ。
「まだ、もうひと眠りできるよ」
「そうだな……ていうか碧、身体、大丈夫……?」
武彦は碧をベッドの布団の中に誘い込んで言った。
「ん、うん。一応接客業って、肉体労働だから」
「デスクワーク組には負けないって?」
「そうは言わないけど。でも、大丈夫。また……嫌じゃなければまた、したい、なって……」
恥じらいながら気持ちを告げると、武彦が婉然と笑んだ。
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