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第9話 治療デート(2)

「白鳥さま、いつもありがとうございます。どうぞこちらへ。奥でお荷物と上着をお預かりさせていただいたのち、足湯をしていただきながら、いつものとおり、ご予約いただいたコースの説明をさせていただきます」 「うん。今日も頼むよ」  白鳥は、四十絡みのロマンスグレーの髪を後ろに撫でつけ、三揃いのスーツ姿でやってくる、碧が六本木店にきて、初めて指名を取った客だ。今ではすっかり常連になっており、碧はいけないと思いつつも、白鳥がくると少しテンションが上がってしまう。 「かしこまりました。お足元、お気をつけください」  白鳥の左手の薬指には、シルバーリングがはまっている。そこがいい、と碧は思う。既婚者が好きなのではなく、恋愛に発展する余地がないから、安心して距離を詰められるからだ。  配偶者がいる白鳥は、こちらが多少傾いたとしても、きれいに躱して許してくれる度量があった。  今日もしっかりサービスしよう、と碧はポケットに入れたカイロで手を温め、思った。

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