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第26話 試写会(5)
「何、でしょう……?」
掠れた声で、この会話も武彦に聞かれているのかもしれない、と思うと、いたたまれなかった。
「また店できみを指名しても、断らないでほしい」
「それは……」
「驚いた?」
「いえ……、わかりました。僕でよければ」
わざと主語を曖昧にした言葉に、碧は意味を持たせないよう、慎重に頷いた。
「良かった。きみの手に、私は惚れているんだ。拒まないでくれて、ありがとう」
言うと、白鳥は目線の高さまでグラスを持ち上げ、笑んだ。そんな気障に見える仕草をしても、彼のような男性だと嫌味にすら見えないのが不思議だった。
「いえ……」
白鳥が必死になるほど、碧は怒れなくなってしまう。ここへ連れてきたのも、何が目的かはわからないが、白鳥なりの葛藤があってのことだろうとわかった。
碧は、半分ほどシャンディガフを飲み干すと、気持ちを入れ替えるためにトイレへ立った。公私混同をしてくれるな、という碧のわがままを尊重してくれる白鳥に、義理を感じていた。
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