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第42話 誤解と曲解と理解(2)
「手を繋いでたのにも理由があって、俺が……その、碧を好きかもしれないって話したら、一兄と手を繋いでみて、何も感じなかったら、俺が突然宗旨替えしたとかじゃなく、その子のことが純粋に好きなんだろうって話になって」
「……つまり、僕と……その従兄弟? の場合と、比べてみてた、ってこと?」
「そう。ついでに言うなら、あそこは一兄の行きつけで、ミックスバーなんだそうだ。俺が行ったのは、あの日が初めてだった。なのに……碧のことばかり責めて、俺、最低だった。でもあの人と楽しそうにしてる碧の声聴いたら、止まらなくて、嫉妬した。……ごめん」
碧は武彦が俯くのを見て、肩の荷が半分降りた気がした。沈黙していると、それを困惑と捉えたのか、武彦は言葉を継いだ。
「どうしてあの時、ちゃんと追いかけて、その子は俺のものですって言わなかったんだろうって、ずっとめちゃくちゃ後悔してた。仕事に逃げて、一兄にも迷惑かけて、碧のことも、傷つけて、もう終わりだと思った。自業自得だって」
「武彦……」
武彦は、カウンター越しに拳を握りしめた。
「最低だ、俺。でも、チャンスがあるなら謝るだけはしたいと思ってさ。あの時、傷つけたこと、ごめんな、碧」
「ううん……ううん、武彦……」
胸の奥が暖かい。碧は後悔した。傷つけたのも、傷ついたのも、武彦のことをちゃんと信じていなかったせいだ。
「僕の方こそ、ごめん。きみに責められた時、後ろめたいと思った。黙って白鳥さんと……お客さんなんだけど、一緒に映画を見たことが、心のどこかで引っかかってたんだと思う。経緯は以前説明したとおりなんだけど、実はあの後、告白されて……断った」
「……何かあったのか?」
武彦は、碧の挙動を見て尋ねた。本当によく見られているな、と碧は苦笑しながら、白鳥が実は同業者だったことと、引き抜きの打診があったこと、そして、今日、ここにくる前に逢って、言われたことを話した。
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