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17歳の冬11

シェーンは近くまで乗ってきていたバイクの後ろに乗せてくれた。 普段は妹さんの送り迎えにも使うらしく、貸してくれたヘルメットは真っ赤だった。 「しっかり掴まれ、あいつらより先に着くぞ」 僕はシェーンの分厚い腹筋に腕を回してしがみついた。 「ブレインに殺されそうだ」    「シェーン、なんか言った?」 「いや、出発する、落ちるなよ」 シェーンが言った近道っていうのは道路じゃ無かった。ほぼ林道や山道の道無き道を突き進む。 本当にしっかりしがみ付かないと振り落とされる。 シェーンの告白。ライアンの告白。 まだどちらにも返事をしていない。 ブレインの事で頭がいっぱいで、気持ちの整理も出来ていない。 でも、コレが終わったら僕はちゃんと考えて答えないと。 このまま、何事も無かった様には過ごせない。 考え事をしていると、いつの間にか山道を抜けてルドルフ通りにでた。左右にはドイツらしい石造りのアパートメントが立ち並ぶ。 「この奥に廃墟になったモーテルがある。バイクを置いて近づこう」 目立たない場所にバイクを停めると歩いて向かった。 まだ、WIAの部隊も来ていない。 モーテルも古い石造りだ。ベルタの看板は残っているが老朽化しているのは目に見えて明らかだった。 「裏口に回ってみよう」 シェーンと回り込んでみると裏口に2人、兵士が居た。 「新しい被験体、もう保たないだろうな」 「まあ、早く死んだ方が本人の為だろ。ドクター•ハンクスに捕まったら俺でも早く死にたいさ」 被験体、、、ブレインの事? 僕は頭が真っ白になってそのまま茂みを出て2人の兵士に近づいた。 「おい、お嬢ちゃんここは所有地だそ。すぐに出ていかない場合は発砲す」 兵士が言いかけた時には、一瞬で距離を詰めて懐に入ると肘を決めて四方投げで1人目を投げ飛ばした。 すぐ様、2人目の兵士が構えた銃ごと流れる様に肩を軸に天地投げで床に頭から落とす。 「おいおいカート、勝手に行くなよ!」 シェーンは僕の家から持ち出した麺棒で、倒した兵士の頭を二、三回殴った。 中に何人居るんだろう。 シェーンは倒れた兵士の銃と無線を奪った。 「俺、銃は使える。このへんに親父と来てたのは狩猟が目的だったんだ」 心強い。僕は銃なんてつかえない。 そっと中に入ると外観は古びた廃モーテルだが中は最新の設備の整った病院みたいだ。 「WIAは待たなくていいのか?俺たちだけなんて無謀だろ?」 「兵士がもう、保たないって言ってた、、、死ぬって事でしょ?きっと酷い目にあってる。WIAを待ってる間に死なせたら後悔する。絶対に助け出す」 その時だった。 「コラ、お前達。家で待つよう言われただろ?」 フェニックスが背後から現れた。 「時間が無いんだ。フェニックス力を貸して」 「入り口の兵士はお前らが倒したのか?」 「うん」 「さっき、ドクター•ハンクスがこの建物に入った。ここは間違いなくカサドールの施設だ。 そしてドクター•ハンクスが来たからにはブレインは残虐な方法で切り刻まれ死ぬ。確かに一刻を争う危険な状況だ」 「僕たちも行かせて」 「分かった。WIAの部隊もまだ到着していない。かなり危険だぞ」 「大丈夫。ブレインの為なら」 「お前もいいのか?」 シェーンは頷く。 「この施設はそう広く無い。赤外線で見る限り兵士は後6人、ドクターが1人だ。俺が右手奥の4人を引き受ける。 ブレインが居るのは左の処置室。入り口の見張り2人を倒せ。 まだ奴等はこちらに気付いて無い。奇襲をかけるんだ」 「分かった」 「それと、処置室の中にいる老人はドクター•ハンクス。見た目は優しいじーちゃんだけどマッドサイエンティスト。かなりイカれてる。油断するな」 奇襲。 銃で狙われたら終わりだ。失敗すれば僕だけじゃなくシェーンも危ない。 僕は腕力も無い。 いち早く懐に飛び込まないと勝ち目はない。 「カート、俺が囮になるから兵士の気がこっちに向いてる時に一気に近づけるか?」 「うん」 チャンスは一度きり。 「行こう」

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