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18歳の夏6

「パパ、今までどこに居たんだよ!ずっとずっと、、、会いたくて、寂しくて、ぼ、僕は、、、」 仕事で一日中居ないママ。 何度、パパに会いたくて星に願っただろう? 頭を撫でてくれる感触も、パパの匂いも、少しずつ薄れていく恐怖。 一度で良いから、会いたかった。 ずっとずっと会いたかった! 「ごめんな」 見上げたパパは優しく笑う。鼻に皺を寄せて。 記憶の通りのパパだ。 温かい胸に顔を埋めて、しばらく声を上げて泣いた。 「ママはどこ?ママもパパに会いたがってる」 一度だけ、朝方に帰宅したママがこっそりリビングでパパの名前を呼びながら泣いていたのを見た。 僕は小さいながらも、その時ママを守ると誓った。 「ママは今、外のスミレ畑にいるよ。一緒に行こう」 パパに手を引かれ、おばーちゃん家を出ようとした時、何故か強烈な不安に駆られた。 「パ、パパ、行きたくない」 このドアの先に行ちゃダメだ。 「どうしたんだい、カート?スミレ畑好きだろう?ママも待ってるから行こう」 「ダメだよ、外は怖い」 理由は分からない。でも出たらダメな気がする。 「外には行きたくない」 「カート、、、」 パパ?どうして僕の手首を引っ張るの? 「行きたくない」 「大丈夫だよ、おいで」 「パパ、怖い」 「大丈夫だよ、おいで」 「やめて、パパ、外はダメ」 「大丈夫だよ、おいで」 「パパ?」 「大丈夫だよ、おいで」 パパじゃない? 誰? 「離して!!」 手首を更に強く引っ張られる。 「パパは、僕が嫌がる事なんかしない」 「大丈夫だよ、おいで」 笑顔のパパはまた強引に引っ張り始めた。 「や、やめて!!」 パパの顔をした人を、投げ飛ばせない。 「大丈夫だよ、おいで」 「お願い、、、お願いだからやめて」 パパ、、、パパじゃないの? 「大丈夫だよ、おいで」 誰か助けて。 誰か。 ブレイン。

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