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18歳の秋7

「銃の使い方をマスターするだけじゃない。ありとあらゆる銃を身体で覚えろ。 マズルジャンプ(銃口の跳ね上がり)、反動、サイティング、グリッピング、トリガー・コントロールを身体に叩き込むんだ。 今後は射撃練習の他に、銃の組立てと分解をタイムトライアル形式で訓練する」 大学生活初日の授業は射撃練習からスタートした。 WIA随一の射撃の名手らしいエージェント•カロスキーが講師だ。 ロマンスグレーの髪をオールバックにした最高にカッコいいオジ様。 元海兵特殊作戦チームMSOT出身のエージェント。今は最前線から引退して訓練生やエージェントの教官をしている。 「大学生活を終えるまでに、自分に1番合う相棒になる銃と巡り合え!」 今日の射撃訓練にはシグ・ザウエルやベレッタ、グロックの9㎜(グロック17と19)が並んでいる。 僕は迷わずグロックを手に取った。 実はエージェント•メイの愛用銃がグロックだ。 優れた低銃身設計。グロックって握った時の銃身線が低いから連射時に跳ね上がりが少ない。 女性のエージェント•メイや、僕みたいな低身長で筋力が付きにくい男性にも扱いやすい。 あと、エージェント•メイからカスタムパーツ豊富だからっておススメされた。 銃を扱った事が無い訓練生は銃選びに戸惑っている。 僕はイヤーマフをつけると実銃のカートリッジを装填、スライドを引き、的を狙い撃ち始めた。 銃は嫌いじゃない。 エージェント•メイと出会って嫌いじゃなくなった。 使い方を間違えさえしなければ、銃は力を与えてくれる。 集中して的を見つめる。 静かな自分だけの空間。 装填数の18発を撃ちイヤーマフを外す。 「すっげー」 10名程の訓練生達とカロスキーが僕を見ていた。 「アンダーソン、その調子だ。身体の重心が僅かに右に倒れぎみだ。フロントサイトが右に振れないようコントロールすれば更に精度が上がる。 射撃センスは悪くない。エージェント•メイが推薦しただけあるな」 「え?メイが推薦?」 「知らなかったのか?まあ、期待に応えろ」 エージェント•カロスキーは他の訓練生の元へ指導に向かう。 メイが推薦しててくれたなんて!全然知らなかった。 隣のブースではコードも射撃練習を始めていた。 凄い!ほぼ、的の真ん中。 「オーヴァーストリート!肘の力を抜け。力だけで銃をコントロールすれば、利き腕を負傷した時に銃心が暴れる」 「はい!」 僕ら訓練生は夢中で射撃訓練に打ち込んだ。

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