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18歳の冬4

「ブレイン!」 僕は授業が終わるとネオヒューマンズクラスに向かった。 教室のドアから中を覗くとブレインはまた今朝の女の子と話している。 イリーナだっけ? 中東系の地味な美人さん。悔しいけど、確かに可愛い。 二人は顔を寄せて何やら話し込んでいる。 僕はドアの前で躊躇う。 ブレインはバイセクシャルだ。 こんな事で不安になりたくないけど、、、 女の子の方が良くなった? 女の子だったら、結婚して、子供だって作れる。 ブレインはイリーナとの話に夢中で、僕の声だって届いてない。 僕以外の人と楽しそうに笑ってる。 ただそれだけでモヤモヤするなんて。 この前、ブレインは「僕だけを愛して」って言った。すごく辛そうに。 なんだか今はあの時のブレインの気持ちが良く分かる。 僕らは結局、同じだ。 相手に夢中で、お互いしか見えなくなってしまう時がある。 それが僕らの幼さ。 やっぱり婚約は早過ぎたのかな? 「おや?お姫様がこんな所までくるとは珍しいな」 「げ、リチャード先生」 「なんだ、その嫌そうな顔は」 僕はこの人が嫌いだ。 嫌いって、アスパラかリチャード先生ぐらい。 「じゃあ、この顔ならどうだ?」 「え、ライアン?!」 突然、リチャード先生がライアンになった。 「俺にそんな嫌そうな顔するのか?」 ライアンの手が頬に触れた。何度も触れた事がある温かくて大きくてゴツゴツした手だ。 「お前に会いたかった」 「ライアン、、、」 「ストップ!! リチャード先生、辞めてもらえますか?」 ブレインが僕の背後から現れた。 「おっと、王子様のお出ましだ」 リチャード先生はライアンの姿から元に戻る。 幻影だって分かってても、声も、表情も、触れた感触も、匂いもライアンそのもの。 だからリチャード先生の幻影はいつも僕の心を大きく揺さぶる。 だから大嫌い。 「ブレイン、私に能力を使うな」 「あなたがカートにこんな事しなければ使いません」 「ははは、やっぱり生意気だ」 リチャード先生は悪戯っ子みたいな顔をして去って行く。 「本当にやっかいな人だ。カート、大丈夫?」 「あ、うん、大丈夫。久しぶりにライアンの顔を見たからビックリしちゃった」 「思い出して恋しくなった?」  ブレインが僕の顔を覗きこむ。  「寂しいけど、君が思ってる様な感情じゃないよ」 ブレインがライアンにずっと嫉妬してるのは知ってる。 ライアンの事は大好きだけど、、、やっぱり僕が恋したのはブレインで、キスもそれ以上の事したいのもブレインだ。 「僕は君だけを愛してるって言ったろ?」 君も僕だけを愛してくれてるよね?

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