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18歳の冬11

「ごめんね黙ってて」 「いいけどビックリしちゃった。何で事前に教えてくれなかったの?」 「もう会ったから分かると思うけど、ウチの母親は本当に個性的な人なんだよ。個性的というより変人」 「た、確かに」 先程、楽屋で話をしたけど強烈なママだった。 テンパってサインくださいって言った僕も僕だけど、ブレインのお母さんは「サインしてやるから尻出しな」が返事だった。 「ただ、ミュージカル女優としては本当に一流。だから先にまともな姿を見せてから会わせようかと思って」 「あはは、でも凄く面白い人だったよ」 「それはミュージカル女優の姿を見た後だから言えるんだよ。本当に」 ホテルに戻る道を、手を繋いで歩く。 冬のニューヨークは寒い。 吐く息も白くなる。 「また、ブレインのお母さんのミュージカル観に行きたいな」 「しばらくはニューヨークって言ってたから一緒に行こう」 ブレインのお母さんには、婚約について反対されなかった。 一生懸命話したつもりだけど、僕の気持ちは伝わってるのかな? 「さっきの君、カッコ良かったよ」 ブレインが優しく笑う。 【ブレインは僕が幸せにします】 そう言い切った。 君の寂しさや孤独、繊細さ、闇、全部。 愛してる。

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