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20歳の暗い夏1

大学2年生の夏。 「別れて欲しい」 「ちょっ、カート?!どういう事?」 この大事件は僕らが婚約して1年半ぐらいの時だった。 「説明して、どうして?!何で??どういう事だか全然分からない!!」 カートは自分を抱きしめて小さく震えている。  僕は混乱しているし、焦りや悲しみや怒りが渦巻いていて上手くまとまらない。 でも、カートの目だけは真っ直ぐ僕を見ていて硬い決意が分かる。 「僕は君を愛してる。僕が何かした?君も僕だけを愛してるって言ってくれたはずだ」  僕らの関係は順調だったはずだ。つい先月まで。 「話したく無い。君の力で無理やり聞き出そうとしたら舌を噛んで死ぬから」 「死ぬ?!ちょっと落ち着いて、お願いだから」 僕が腕に触れると、カートに振り払われた。 情けないけど僕はショックで固まる。 「君がそこまで何を思いつめているのか全然分からない!!話してくれたら2人で解決出来るはずだろ?!お願いだ、別れるなんて言わないで?!納得なんか出来ない」 「急に言われて君も混乱してると思うけど、もう君とは付き合えないし結婚もしない。婚約は解消して。指輪は返すから」 カートが指輪を外した。 「嫌だ、受け取らない」 「じゃあ捨てておく。もう君とは会わない、大学も辞める」 大事にしてくれていたはずの指輪を捨てる?! 「大学を辞める?!嘘だろ?!ちょっと待って本当に何があったの?」 「話したく無い」 「君に力を使いたく無い。話して」 「言ったろ?力を使ったら舌を噛んで死ぬから」 「じゃあ、力を使って死ねなくする。君を失うぐらいなら」 「お願い、それは辞めて」 カートは突然泣き出した。 絶対におかしい。 「カート、本当に何があったの?話してくれないと分からない。僕が何かしたんなら、せめて挽回するチャンスが欲しい」 「君は何も悪く無い」 「じゃあ、なんで?」 カートはしゃがみ込み号泣し始めた。 「そんなに泣くって事は、君だって別れたく無いって事だよね?何か事情があるのは分かった」 カートはしゃがみ込み、膝を抱えて泣きじゃくる。 「僕は君だけを愛してる」 カートの肩にそっと触れると今度は振り払われなかった。 「君が落ち着くまで、待つから。今は何も聞かないから。大学を辞めるのは待って」 「本当にごめんなさい。ブレイン。僕は君を幸せっ、、、幸せにしたかった」 「知ってる。大丈夫だから」 さて、、、 僕の大事なカートをここまで傷付けた誰かを殺しに行くとするか。

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