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20歳の暗い夏5
朝目覚めてこんなに憂鬱なのは久しぶりだ。
カートと出会って、どれだけ自分が幸せだったか思い知らされる。
バスルームの鏡に映る自分は最悪だ。
寝不足のくたびれた顔に無精髭。
「こんな姿、カートに見せられないな」
気力を振り絞って身支度を整えていると、突然、ノックも無しにドアが開いた。
「ブレイン!!」
「コード?!急になに?!」
「カートと別れたって本当なの?!」
カートにフラれたのは一昨日。コードにも話したのか。
「別れたのは本当だけど」
「何で?!見損なったよ、その程度の気持ちでカートと婚約したの?!」
「ちょ、落ち着いて」
「落ち着ける訳ないでしょ!カート泣いてたよ!!」
「フラれたのは僕だから」
「え?!」
「カートから婚約破棄されてフラれた」
「じゃあ、なんか理由があるはずだよ!カートめちゃくちゃ落ち込んでる。俺には話そうとしないし」
やっぱり、僕と別れたく無いと思ってくれてる?
「このまま別れるつもり?」
「そんな訳ないだろ」
「じゃあどうするの?」
「君には関係ない」
グセフ共和国での任務や、今の状況は極秘事項。コードにも話せない。
「じゃあ、俺がカートを奪っても文句言えないね」
「な?!奪う?!」
「今は君の婚約者じゃないから関係ないよね?」
冗談だろ。
僕が誰かを殺してしまう前に、早くカートを取り戻さないと。
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