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20歳の暗い夏8

「心辺りのある場所は全部探したの?」 コードと合流して大学の周りでカートを探す。 行きそうな場所を1箇所ずつ片っ端から。 「当たり前だろ!!」 暑いなか走り回って2人とも汗だくだ。 「俺に当たるなよ、俺だってカートの事心配してる」 焦りと苛立ちから一緒にカートを探してくれてるコードに当たってしまった。 「ごめん」 「他に行きそうな場所は?」 「思いつく限り探してる。何で急に脱走なんか」 「あ、、、え、俺のせいかも?」 走っていた足を止める。コードが気まずそうな顔をしている。 「コード、どういう意味?話して」 嫌な予感しかない。 「昨日、カートに、、、告白した」 やっぱり。 「余計な事を。君のせいでカートが出て行ったとしたら絶対に許さない」 「まさか、出て行くなんて思わなかったんだよ」 「カートは何か言ってた?返事は?」 「「僕の近くに居たらみんな不幸になるからダメ」だって。そんな事無いって言ったけど全然聞いてくれなかった」 クソっ、せめて大学か寮に居てくれたら守れたのに。 「今はカートを見つける事に集中しよう」 苛立ってる場合じゃない。 その時、頭上から声がした。 「ブレイン、お前達はそろそろ寮に戻るんだ」 「フェニックス!」 「え、うそ、うそ、うそ、うそ、天使じゃん!」 フェニックスを初めてみたコードが驚いて腰を抜かす。 「天使じゃなくて俺はフェニックスだ。 カートはこの大学でエージェントとして訓練されてる。しかも進級試験ではトップだ。逃走ルート、監視カメラの死角、それに変装。ありとあらゆる手段を学んだはずだ。探索はプロでも簡単じゃないだろう。 後は俺達に任せてくれ」 「じっと待ってるなんて耐えられない」 「今は耐えるんだ。俺たちも全力を尽くす」 闇雲に探しても無駄だって分かってる。 分かってる。 カート。無事に戻って来て。

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