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20歳の暗い夏2-1
ブレインと別れて婚約も解消した。
僕が自分で決めた。
決めたのに、未練がましく涙が止まらない。
何回も、ブレインの元に戻りたくて泣いてる。
あの温かい胸に抱きしめてもらいたい。
僕だけに向けられる優しい笑顔で見つめられたい。
僕ってなんでこんなに弱くてバカなんだ。
僕が今、ブレインの為に出来る事は離れる事しか無いって分かってるのに。
もう会いたい。
「会いたいよぉブレイン、、、」
でも、泣いてる場合じゃない。
僕は今、長距離バスを利用して東海岸をバージニア州リッチモンド、ノースカロライナ州グリーンボロと一気に下り、ジョージア州アトランタに到着した所だ。
すぐに変装用の帽子を目深に被り85号線を走る市バスに乗り換える。
僕のバックパックは変装用の衣類や帽子、メガネの他には現金と地図しか入ってない。
ATMを使っても、スマホを使っても居場所がWIAに特定される。
勿論、監視カメラに映るのも不味い。
監視カメラの死角を通るか、監視カメラに映る度に衣装を変えている。
暑いけどタンクトップ、Tシャツ、カットソーにパーカーと重ね着しておいて、順番に脱いでは捨てる。
帽子やメガネも着けたり外したり。
目的地がある訳じゃ無い。
ただ、僕のことを誰も知らない場所に行きたいだけ。
誰にも迷惑がかからない場所。
ヤツらに見つからない場所。
とにかく、ブレインから遠い場所。
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