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20歳の暗い夏2-2
市バスを乗り換えながら、モーテルを転々とする日々。
一気に移動した後は、出来るだけ目立たない様に大きなシティーは避けて移動している。
泊まる場所が無い時は公園で野宿もしたけど虫に刺されたり、、、男の人に襲われたりしたから用心のため明るい内に休める場所を探すようにした。
戦い方を知っていても、やっぱり襲われたら怖くて。
大学から逃げて8週間。そろそろ仕事も探さないと現金が底をついて来た。
アラバマ州に入ってからはモーテルにも泊まらず、24時間営業のファストフード店や夜行バスの停留所で仮眠を取るのが精一杯。
僕、限界かも。
もう、何日もまともにベッドで眠ってない。
今日はアニストンのカルホーン空港近くで休める場所を探してる。
暑くて、足が痛くて、疲れてる。
「そろそろ日が暮れちゃう」
この辺りは治安が良さそうには見えない。
相手が大柄な男でも、銃を持っていても普段の僕なら対処出来ると思うけど。
もう体力も限界。
複数で来られたら、、、
知らない男達の興奮した息遣い、匂い、触られた感触。
身震いがしてきた。
どこか、安全な場所を探そう。
しばらく歩いていると道路沿いに24時間営業の看板が出た飲食店を見つけた。
「よ、良かった」
僕は入ってサンドイッチとコーヒーを注文して1番目立たないカウンターの端に腰を下ろした。
こんな生活がいつまでも続けられるとは思ってない。
仕事と住む場所を探したい。
身分証も無い僕が簡単に見つけられる訳無いのも分かってる。
自分がどれだけ無謀な事をしているかも。
「ブレイン、、、」
辛い時、怖い時、寂しい時、悲しい時。
僕は君の名前を呟いてる。
愛してる。
君を傷付けて、決死の覚悟で離れた。
今は、、、弱音を吐いてる場合じゃない。
バッグパックを抱えて蹲っていると隣に誰かが座った。
「隣いい?」
「どうぞ」
「君1人?」
「?」
「ごめん、怪しい者じゃかいから」
隣には40代ぐらいのおじさんが座っている。
両腕にはタトゥー、筋肉質な体型。白いシャツにデニム、長めの金髪を結んでいる。
「なんか、君がフラフラで今にも倒れそうだったから心配で」
「大丈夫です」
今は誰とも関わりたく無い。放っておいて欲しい。返事をするのも億劫なんだ。
「君、本当に大丈夫?熱あるんじゃない?」
「大丈夫です」
「ちょっと失礼」
額にゴツゴツした大きな手が触れる。
「ホラやっぱり熱があるみたいだ。家まで送ろうか?近く?」
放っておいて。
「家は無い」
「じゃあ、誰か呼べる人は?」
「誰もいない。家も無いしお金も仕事も、僕には何も、、、な、、、い、、、」
言いながら涙が溢れて来た。
我慢していたけど無理だった。
今の僕には何にも無い。
「おいおい、大丈夫か?」
いきなり泣き始めた僕に、知らないおじさんは紙ナプキンを取ってくれた。
「放っておいて、、ぐださい」
「行くとこ無いならウチに来るか?」
「え?」
「俺、目の前に見えてるBARのオーナー。店の2階が居住スペース。狭くて良けりゃ泊めてやる」
おじさんが指差した場所は、道路を挟んだ向かいだ。木造の古い一軒の店が見える。Jazz Bar feroceのネオンサインが見えた。
「ついでにウェイター募集中だ」
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