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20歳の暗い夏2-3

知らないおじさんの家なんて普段なら絶対に行かない。 今まで何度か男性に襲われた経験から、自分がそういう性的な対象になるのだと理解している。 「いく」 それだけ僕は限界だった。 ゆっくり眠りたい。 それだけ。 「いいよ、おいで。俺はアーティ。君の名前は?」 「コード」 咄嗟に親友の名前を出した。 「コード(和音)か、良い名前だ」 注文していたサンドイッチとコーヒーはテイクアウトにしてもらって、僕は彼の家に向かう事にした。 「俺は20:00から店を開けるからコードはシャワーでも浴びて2階で適当に寝てな」 「ありがとうございます」 「敬語はいいから。まずは風邪を治すんだな」 居住スペースは裏口から2階に上がる作りになっていた。 屋根裏を改装してあるのか天井が少し低い。 階段を上がって右手のドアを開けるとシャワールームとトイレや洗面台など水回りが一通りある。 左のドアを開けると大きなベッドが鎮座する寝室。奥にクローゼット、手前に小さめのソファーとテレビしかない。 「キッチンは一階にある店のキッチンを使ってるから何か食べたい時は下に。冷蔵庫にあるものは好きにしていいから」 「僕、ソファーで寝ていい?」 「病人はベッド使え、俺がソファーで寝る」 「ダメだよ、アーティの家なのに」 「気にするな」 「アーティが嫌じゃなかったら、ベッド大きいから一緒に寝ちゃダメ?」  ソファーは1人掛けタイプだ。身体の大きなアーティがゆっくり眠れる様には見えない。 「ok、寝相悪くても知らないからな」 「あはは、大丈夫。ありがとう」 「やっと笑ったな」 確かに笑ったのなんて久しぶりだ。 人とこんなに会話したのも。 「事情は知らないし詮索もしないから、今は休めよ」 「何でそんなに優しくしてくれるの?」 「優しいか?別にそんなつもりは無いけど、、、多分アレだ、お前ぐらいの甥っ子がいる。ただ放っておけなかったんだよ」 それだけ言うとアーティは階下に降りていった。 シャワーを借りて久しぶりに汗を流すとベッドを借りて横になった。 階下からはSmoke Gets in Your Eyesが流れている。ジャズのスタンダードスローナンバー。アルトサックスの奏者はなかなか上手い。 「アコースティックジャズを聴きながら眠れるなんて凄い贅沢」 久しぶりに穏やかな気持ちで目を閉じた。

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