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20歳の暗い夏2-5

「コード、コレ2番テーブル」 「了解!」 熱々のポテトとチキンをテーブルに運ぶ。 「お待たせしました」 「ありがとう」 常連客が多いJazz Bar feroceは働きやすい。お客さんも優しい。 まあ、一番優しいのはアーティかな。 「君、めっちゃ可愛いよね、連絡先教えてよ」 若くて金髪に青い目をした、ちょっとキュートな人に声を掛けられた。 「僕、携帯持ってないから」 それに、僕はブレインを今でも愛してる。目移りなんてしない。僕が死ぬまで、ずっと好き。 「嘘でしょ、いいじゃん連絡先ぐらい!俺の名前はディーン、君は?」 カッコいい人だけどしつこいなぁー。 「本当に携帯無いし、すみません」  「えー、じゃあ一杯奢るから付き合って」 困っていたら 「ウチの口説くの辞めてくれるか?出禁にするぞー!」 カウンターからアーティが止めに入る。 働いてる時に口説かれると決まって助けてくれる。 「アーティ、ありがとう」 なんとか抜け出してキッチンに避難した。 「気をつけろよ、お前、見た目だけは良いから」 「見た目だけ?酷い」 「あー、嘘嘘、中身も良い良い」 「適当でしょ」 アーティと僕は、実は凄く上手くいってる。 あ、恋愛的な意味じゃないよ。 2人でこの店の2階に暮らし始めて2週間。 寝食を共にして、一緒に働いているのに、お互いビックリするほどストレスが無い。 相性?フィーリング? まるで、ずっと二人暮らしをしていたみたい。 親子程、齢が離れているから? まるでパパみたい。 男の人と同じベッドで眠っても、嫌悪感も恐怖も感じない。 僕らの不思議な関係。 「さっきの男、見ない顔だな」 「そうなの?」 「この辺りは田舎だからな、大体の奴らは顔見知りだ。まだアイツ、帰らなそうだし今日は先に上がっていいぞ」 「過保護ー」 口説かれて確かに困ったけど、それはこの店のお客さんだから無碍に出来ないなと思ったから。 店が関係無ければ、男一人ぐらい平気。 「そう、俺は過保護なんだよ。さっさと上がって先にシャワー浴びてろ」 僕って細くてひ弱そうに見えるから、余計な心配をさせてしまってる。 「はーい。夜食はチキンピタサンドにして」 「ok、店閉めたら持って行くよ」 アーティは僕をベタベタに甘やかす。 アーティと過ごす時間は心地良い。 僕はそれに寄りかかってて良いのかな?

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