104 / 112

20歳の暗い夏2-10

シェイプシフター。 僕はずっと伝説の生き物だと思っていた。 WIAに入ってネオヒューマンズ以外にもタルパと呼ばれる生き物達が居ると知った。 タルパはヴァンパイヤやライカン(狼男)、悪魔にシェイプシフターみたいな太古の昔から存在する人外の者達の総称だ。 そしてディーンとサムはタルパを専門に狩るハンターらしい。 僕を狙ってるシェイプシフターは人間そっくりに姿形を変えられる化け物。 姿形どころか声や匂いまで。 元の姿は人間の型をした爬虫類や蛙に近い。少し湿った皮膚は薄いグレー。 そして人間達に紛れ暮らしている。 「僕、シェイプシフターに狙われてる」 「何だって?どういう事だ」 「話したら助けてくれる?」 「当たり前だ!でも、何でコードが狙われるんだ?シェイプシフターは凶暴だが個人を執拗に狙う怪物じゃない。ヤツらは人間に紛れる為に殺しはやるが、基本的には目立たない様に生きる」 どこから話そうかな、、、 「今、グセフ共和国って国でシェイプシフターが大繁殖してるのは知ってる?」 「大繁殖?おい、シェイプシフターには性別がない。繁殖が出来る個体は、、、まさか!」 「僕を狙ってるシェイプシフターは繁殖種。最初の一匹。ヴォジャノーイっていう奴」 「ヴォジャノーイ?!本当に実在したの!?兄貴、昔何かの本で読んだだろ?シェイプシフターの起源」サムが興奮する。 「ヴォジャノーイって何だっけ?」 「ヴォジャノーイは数百年前から東欧に伝わる男性の水の精だよ。 元々はスラブ神話から来ている民間信仰の神。 同様の水の精が、チェコやスロヴァキア、セルビアやポーランドでも信じられている。数百年生きるほぼ不死身の肉体と言われてる。 ヴォジャノーイはシェイプシフターの起源とも言われていて、生殖器官の無いシェイプシフターは全てヴォジャノーイと人間の交配から産まれるんだ」 「ヴォジャノーイは僕を番に選んだ。だから逃げてる」 「え、まさかコードはやっぱり女?」 ディーンが驚く。 「違うよ、男!でもヴォジャノーイは男女どちらでも子供を産ませる事が出来るって言われた」 「それで逃げてるのか?」 「うん。ヴォジャノーイは僕を手に入れるために僕の大事な人達をシェイプシフターと入れ替えるつもりだった。だから居場所も言わずに婚約者からもママからも離れた」 「成る程。シェイプシフターは基本、少人数のグループで動き、人間に成り替わる時は一家族を丸ごと襲う習性がある。家族や友人から離れたのは正解だ」 サムはシェイプシフターにも詳しいみたい。 サムの言った通りシェイプシフターは家族ごと乗っ取る。誰かに変身する度にオリジナルの人間を殺して人生を奪う。 僕の大事な人達が危険だった。 ヴォジャノーイはシェイプシフターよりもずっと強い。銃もナイフも全く歯が立たない。 戦って何とか逃げて来た僕は、ヴォジャノーイの強さを知ってる。 WIAに頼ろうとしたけど、それも失敗した。 「よし、じゃあヴォジャノーイを誘き出して仕留めよう」 「出来るの?!シェイプシフターは素早いし、力も強い、それに皮膚は硬い。ヴォジャノーイは更に不死身だよ」 「俺たちは、ここに来る前にサウスカロライナで4人家族を殺して乗っ取たシェイプシフターを3匹殺した。逃げた最後の一匹を追ってこの町に来たんだ。そいつを使ってヴォジャノーイをこっちへ誘き出そう」  「シェイプシフターを3匹も?凄い、、、」 「俺たちはそういう化け物専門なんだよ」

ともだちにシェアしよう!