21 / 409
第21話 夢囚 其の四★
「あ、っあぁぁぁ……っ!」
後孔の奥を硬く太いもので抉じ開けられ、先端が媚肉を、結腸の蕾とそのさらに奥を、まさに突き刺す感覚に、香彩 は淫ら声を上げた。
じわりじわりと染み出しては、考える力を奪い去っていく凄まじい快楽の波に、香彩は素直に従う。
あえかな嬌声を上げ、次第に呂律の回らない口調で、自然と上がる善 い言葉を、包み隠さず素直に彼に伝える。
「あ……っん、りゅ……う、お、く、奥、すごくいい……っ……きもちいいっ……!」
「……ああ……気持ちいいな……! こんなにも俺を締め付けて……離してくれそうにもない……っ!」
「ひぁっ……ぁんっ、……っだめ、ぁ」
ずん、と竜紅人 が突き上げる。先程まで香彩に任せていた動きを奪うかのように、腰を掴んで揺さぶっては突き刺す。
「……やぁぁっ、んんっ……そんなおく、はげし………っあぁぁ…っ!! やっ、あっ…あっ …あぁ…っ」
「かさい……っ!」
「…ぁんっ、……っらめ、ぁ…でちゃ……、やぁぁでちゃ……う……んっ」
陽物の中の道を責めていた竜の尾の先端が、ずるりと抜かれて雁首の括れに巻き付いた。
竜紅人の突き上げる動きに合わせて、香彩の屹立から、こぷりと白濁としたものが溢れ出す。
「だ、め……もぉ、いく、い……ち、ゃ……」
「……くっ! 出すぞ……!」
「っは、ぁぁ……ん、りゅ……の、ほしいっ……ぼくのなか、いっぱいにしてぇ……っ!」
腹側の凝りをこれでもかと擦り上げながら、結腸の肉輪の締め付けを味わい尽くした竜紅人の雄は、早められた律動の果てに、熱い飛沫を最奥へと叩きつけた。
「……あぁっ…っぁ、あ、っ、あぁぁぁ……っ!」
香彩は身を震わせた。
胎内 を甘く灼く竜紅人の熱に、全身を痙攣させながら、堪らず自身も再び吐精し、彼の腹に白濁とした溜まりを作る。
繋がった場所から溢れて流れ行く竜紅人の熱を、惜しむように後孔が蠕動し、きゅ、と締め上げた。
荒い息を吐きながら、香彩が竜紅人の胸へと倒れ込む。
同じく荒い息遣いのまま竜紅人は、愛しげに藤紫の髪に接吻 を贈り、手櫛で梳 る。
香彩が少し顔を上げれば、竜紅人がより香彩の顔を見たいのだとばかりに、貼り付いた横髪を耳へと引っ掻けた。
柔らかい伽羅色とぶつかって、香彩は自然と彼の唇に接吻 を落とす。
初めは啄むように。
そしてしっとりと重ねて、だんだんと深く。
やがて舌を絡み合わせながら、竜紅人がゆっくりと腰を引いていった。
男根が抜かれていく感覚に、香彩は、んっ……、と喉の奥でくぐもった声を上げる。無意識の内に名残惜しいのか、きゅ、と締める後蕾に竜紅人が、くすりと笑った。
「……っ!」
やがて全て抜かれたと同時に、卑猥な音を立てて溢れ出す熱が、竜紅人の雄の上に落ちて、つつと流れて行く。
「んっ……」
唇を離した香彩が、後蕾から熱が零れ落ちていく感触に、思わず短い艶声を上げた。
足に力が入らないのか、内股を震わせながら香彩はついに力尽きたように、竜紅人の身体の上に落ちた。
より身体が密着すれば、抜き出たばかりの竜紅人の雄が己のふぐりに当たって、香彩はぴくりと身を震わせる。だがそれは先程のような硬さはもうなく、香彩はほっとしたように息をついた。
しばらくの間、お互いの整わない荒い息遣いだけが、湯殿の中を占めていた。そんな中でも竜紅人は、慈しむように労るように、香彩の背中を撫で、髪を愛でる。
それがやけに気持ち良くて、香彩は息を整えながらも竜紅人の胸の上で、されるが儘になる。
ふと香彩を軽々と抱えながら、竜紅人が上体を起こした。後ろへ倒れそうになる背中を、竜紅人の大きな手が支える。思わず香彩は、彼の首に抱き付いた。
座りながら身体を横へ移動させて、しっかりと香彩を抱き締めながら、竜紅人は湯船に身を沈める。
そういえば湯殿に来たというのに、ほとんど湯船に浸かっていなかったことを思い出して、香彩は顔を赤らめた。
挿入されながら湯殿へ連れて来られて、湯に入ったと思いきや、自慰を見せろと湯から上げられて。
思い出すだけでも、恥ずかしくて堪らないというのに。
──お前も……あの時のことを塗り変えてくれ。もう罪悪感なんて感じてくれるな。
──今が……あの時だと思って、俺を……感じてくれないか? かさい……。
同じ体勢で同じように責められて果てた後の、あまりにも甘やかな時間が、いたたまれなくて仕方ない。
今もそうだった。
優しく抱き締められたまま湯に入って、慈しむように何度も何度も頭を撫で、接吻 を落とし、髪を愛でる。
あの時には考えられなかった、穏やかな事後。
(……忘れる為に身体を繋げたあの時には、考えもしなかった)
こんな未来があるなんて思いもしなかったのだ。
湯の温かさ気持ち良さ。
そして竜紅人の腿の上に乗り、向かい合って抱き締め合う腕の力強さに、香彩は、ほぉうと小さく息をつく。
だが。
弛緩し始めていた身体が、再び強張りを見せた。
髪を愛でていた竜紅人の手が、背中を通って臀部を軽く掴んだかと思うと、再び後蕾に伸びたからだ。
ふるふると、香彩は頭 を振った。
「……もう、無理……むり、りゅ……こうと……!」
今にも泣き出しそうな香彩を、分かっている、と宥めるように耳元へ吹き込むのは、竜紅人の優しくも低い声色だった。
「掻き出すだけだから……少し、我慢……な?」
「──あっ……んっ!」
形の良い長い竜紅人の指が、後孔の襞を確かめるように幾度か、ぐるりと円を描く。
たったそれだけで、すでに咥えることを覚えてしまった秘所は、ひくついて指の前に湯を呑み込む。
やがてその湯と共に、後蕾は指の二本を易々と呑み込んで、きゅうと食い締めた。
「ん……っ」
何度か掻き出す指の仕草に、気付けば腰を浮かせながらも、香彩は声を押し殺す。
目合 を伴うことのない指に、艶声を上げてしまうことが、どうしても恥ずかしかったのだ。
ようやく指が抜かれた時には、香彩の息は絶え絶えだった。
竜紅人の首筋辺りに頬を寄せて、息を整える。落ち着いた頃に襲ってくるのは、強い眠気だった。
「……ん……」
それを見透かされたのだろうか。
湯から少し出ている背中を、体温の高い手が、とん、とん、と叩く。
「眠くなると俺の首筋に擦り寄ってくるのは昔と一緒で、やはり変わらないんだな」
「……りゅ……う」
「寝ていいぞ、香彩。もう少し温まったら、ちゃんと寝所へ連れて行ってやるから」
「ん……ごめ……」
そうして何度目かの背中のあやしで、香彩は気を失うようにして、眠りについたのだ。
ともだちにシェアしよう!