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第21話 夢囚 其の四★

「あ、っあぁぁぁ……っ!」  後孔の奥を硬く太いもので抉じ開けられ、先端が媚肉を、結腸の蕾とそのさらに奥を、まさに突き刺す感覚に、香彩(かさい)は淫ら声を上げた。  じわりじわりと染み出しては、考える力を奪い去っていく凄まじい快楽の波に、香彩は素直に従う。  あえかな嬌声を上げ、次第に呂律の回らない口調で、自然と上がる()い言葉を、包み隠さず素直に彼に伝える。 「あ……っん、りゅ……う、お、く、奥、すごくいい……っ……きもちいいっ……!」 「……ああ……気持ちいいな……! こんなにも俺を締め付けて……離してくれそうにもない……っ!」 「ひぁっ……ぁんっ、……っだめ、ぁ」  ずん、と竜紅人(りゅこうと)が突き上げる。先程まで香彩に任せていた動きを奪うかのように、腰を掴んで揺さぶっては突き刺す。 「……やぁぁっ、んんっ……そんなおく、はげし………っあぁぁ…っ!! やっ、あっ…あっ …あぁ…っ」 「かさい……っ!」 「…ぁんっ、……っらめ、ぁ…でちゃ……、やぁぁでちゃ……う……んっ」  陽物の中の道を責めていた竜の尾の先端が、ずるりと抜かれて雁首の括れに巻き付いた。  竜紅人の突き上げる動きに合わせて、香彩の屹立から、こぷりと白濁としたものが溢れ出す。 「だ、め……もぉ、いく、い……ち、ゃ……」 「……くっ! 出すぞ……!」 「っは、ぁぁ……ん、りゅ……の、ほしいっ……ぼくのなか、いっぱいにしてぇ……っ!」  腹側の凝りをこれでもかと擦り上げながら、結腸の肉輪の締め付けを味わい尽くした竜紅人の雄は、早められた律動の果てに、熱い飛沫を最奥へと叩きつけた。 「……あぁっ…っぁ、あ、っ、あぁぁぁ……っ!」  香彩は身を震わせた。  胎内(なか)を甘く灼く竜紅人の熱に、全身を痙攣させながら、堪らず自身も再び吐精し、彼の腹に白濁とした溜まりを作る。  繋がった場所から溢れて流れ行く竜紅人の熱を、惜しむように後孔が蠕動し、きゅ、と締め上げた。  荒い息を吐きながら、香彩が竜紅人の胸へと倒れ込む。  同じく荒い息遣いのまま竜紅人は、愛しげに藤紫の髪に接吻(くちづけ)を贈り、手櫛で(くしけず)る。  香彩が少し顔を上げれば、竜紅人がより香彩の顔を見たいのだとばかりに、貼り付いた横髪を耳へと引っ掻けた。  柔らかい伽羅色とぶつかって、香彩は自然と彼の唇に接吻(くちづけ)を落とす。  初めは啄むように。  そしてしっとりと重ねて、だんだんと深く。  やがて舌を絡み合わせながら、竜紅人がゆっくりと腰を引いていった。  男根が抜かれていく感覚に、香彩は、んっ……、と喉の奥でくぐもった声を上げる。無意識の内に名残惜しいのか、きゅ、と締める後蕾に竜紅人が、くすりと笑った。 「……っ!」  やがて全て抜かれたと同時に、卑猥な音を立てて溢れ出す熱が、竜紅人の雄の上に落ちて、つつと流れて行く。 「んっ……」  唇を離した香彩が、後蕾から熱が零れ落ちていく感触に、思わず短い艶声を上げた。  足に力が入らないのか、内股を震わせながら香彩はついに力尽きたように、竜紅人の身体の上に落ちた。  より身体が密着すれば、抜き出たばかりの竜紅人の雄が己のふぐりに当たって、香彩はぴくりと身を震わせる。だがそれは先程のような硬さはもうなく、香彩はほっとしたように息をついた。  しばらくの間、お互いの整わない荒い息遣いだけが、湯殿の中を占めていた。そんな中でも竜紅人は、慈しむように労るように、香彩の背中を撫で、髪を愛でる。  それがやけに気持ち良くて、香彩は息を整えながらも竜紅人の胸の上で、されるが儘になる。  ふと香彩を軽々と抱えながら、竜紅人が上体を起こした。後ろへ倒れそうになる背中を、竜紅人の大きな手が支える。思わず香彩は、彼の首に抱き付いた。  座りながら身体を横へ移動させて、しっかりと香彩を抱き締めながら、竜紅人は湯船に身を沈める。  そういえば湯殿に来たというのに、ほとんど湯船に浸かっていなかったことを思い出して、香彩は顔を赤らめた。  挿入されながら湯殿へ連れて来られて、湯に入ったと思いきや、自慰を見せろと湯から上げられて。  思い出すだけでも、恥ずかしくて堪らないというのに。 ──お前も……あの時のことを塗り変えてくれ。もう罪悪感なんて感じてくれるな。 ──今が……あの時だと思って、俺を……感じてくれないか? かさい……。    同じ体勢で同じように責められて果てた後の、あまりにも甘やかな時間が、いたたまれなくて仕方ない。    今もそうだった。  優しく抱き締められたまま湯に入って、慈しむように何度も何度も頭を撫で、接吻(くちづけ)を落とし、髪を愛でる。  あの時には考えられなかった、穏やかな事後。 (……忘れる為に身体を繋げたあの時には、考えもしなかった)  こんな未来があるなんて思いもしなかったのだ。      湯の温かさ気持ち良さ。  そして竜紅人の腿の上に乗り、向かい合って抱き締め合う腕の力強さに、香彩は、ほぉうと小さく息をつく。  だが。  弛緩し始めていた身体が、再び強張りを見せた。  髪を愛でていた竜紅人の手が、背中を通って臀部を軽く掴んだかと思うと、再び後蕾に伸びたからだ。  ふるふると、香彩は(かぶり)を振った。 「……もう、無理……むり、りゅ……こうと……!」  今にも泣き出しそうな香彩を、分かっている、と宥めるように耳元へ吹き込むのは、竜紅人の優しくも低い声色だった。 「掻き出すだけだから……少し、我慢……な?」 「──あっ……んっ!」  形の良い長い竜紅人の指が、後孔の襞を確かめるように幾度か、ぐるりと円を描く。  たったそれだけで、すでに咥えることを覚えてしまった秘所は、ひくついて指の前に湯を呑み込む。  やがてその湯と共に、後蕾は指の二本を易々と呑み込んで、きゅうと食い締めた。 「ん……っ」  何度か掻き出す指の仕草に、気付けば腰を浮かせながらも、香彩は声を押し殺す。  目合(まぐあい)を伴うことのない指に、艶声を上げてしまうことが、どうしても恥ずかしかったのだ。  ようやく指が抜かれた時には、香彩の息は絶え絶えだった。  竜紅人の首筋辺りに頬を寄せて、息を整える。落ち着いた頃に襲ってくるのは、強い眠気だった。 「……ん……」  それを見透かされたのだろうか。  湯から少し出ている背中を、体温の高い手が、とん、とん、と叩く。 「眠くなると俺の首筋に擦り寄ってくるのは昔と一緒で、やはり変わらないんだな」 「……りゅ……う」 「寝ていいぞ、香彩。もう少し温まったら、ちゃんと寝所へ連れて行ってやるから」 「ん……ごめ……」     そうして何度目かの背中のあやしで、香彩は気を失うようにして、眠りについたのだ。    

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