fujossyは18歳以上の方を対象とした、無料のBL作品投稿サイトです。
私は18歳以上です
蒼竜は泡沫夢幻の縛魔師を寵愛する 第133話 幽閉 其の四 | 結城星乃の小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
蒼竜は泡沫夢幻の縛魔師を寵愛する
第133話 幽閉 其の四
作者:
結城星乃
ビューワー設定
133 / 409
第133話 幽閉 其の四
紫雨
(
むらさめ
)
の低く艶やかな声を耳に吹き込まれて、びくりと
香彩
(
かさい
)
が身体を震わせる。引き寄せられた
香彩
(
かさい
)
の身体は、気付けば再び軽々と横抱きにされていた。 成長してそれなりに身長も伸び、体重もあるというのに、体格の良い
紫雨
(
むらさめ
)
にとっては、きっと些細なものなのだろう。どこか意に満たないものを感じながら、
香彩
(
かさい
)
は再び熱っぽい息をつく。 「……結界……を」 吐息混じりにそう言う
香彩
(
かさい
)
に、
紫雨
(
むらさめ
)
は納得したかのように、ああ、と呟く。そして何やら面白いものを見たと言いたげに、喉奥でくつくつと笑うのだ。 「
術力
(
えさ
)
が足りぬだろうと思ってはいたが、黄竜は俺の
術力
(
えさ
)
に貪欲なことよ。余程俺に飢えていると見える」
紫雨
(
むらさめ
)
はそう言いながら、門上に伏せる黄竜を見上げる。竜形となった
療
(
りょう
)
に表情の変化は見られない。無言のままじっと
紫雨
(
むらさめ
)
を見つめる紫水晶の目は、一体何を思うのだろう。 「
香彩
(
かさい
)
、有難い申し出だが、お前の術力を借りることは出来ない。──そうだろう?
療
(
りょう
)
」
療
(
りょう
)
、と呼び掛けられた黄竜は、小さく唸り声を上げた
後
(
のち
)
、うん、と思念で
応
(
いら
)
えを返した。 『
香彩
(
かさい
)
の術力で結界作っちゃったら、それこそ竜ちゃんの思う壺、なんだよね』 「……?」 分からない。 術力が足りなければ足して、結界を強化すればいいだけの話ではないのか。 身体の熱に翻弄されながらも
香彩
(
かさい
)
は思う。 そんな不服に思う心内が、表情に現れていたのだろうか。黄竜は思念で、くすくすと笑った。 『……竜の聲、って言ったら、もう分かるよね?』 「──……あ……」 少し間を置いて、思わず
香彩
(
かさい
)
は言葉を洩らした。
紫雨
(
むらさめ
)
の作った結界を強化することは、とても簡単だ。 だが術者そのものが、幽閉者の傀儡だとしたら。
御手付
(
みてつ
)
きにとって、竜の聲は絶対だ。
竜紅人
(
りゅこうと
)
に、そして蒼竜に竜の聲を使われて、逆らえたことなど今までに一度もない。 どんなに心内で駄目だと思っていても、蒼竜が竜の聲でたった一言、解けと言われてしまったら、
香彩
(
かさい
)
は結界を解くだろう。 では果たしてどうすればいいのか。 そんな気持ちを抱えたまま、不安げに揺れる深翠の目は、真っ直ぐに黄竜の紫闇を捉える。 黄竜は再び小さく唸り声を上げると、軽く竜体を震わせた。 ふわりと薄金の霧の様なものが、辺りに舞い漂う。 黄竜の神気だ。 それはやがて蒼竜屋敷全体を覆い尽くす程にまで、広がりを見せていた。 『要は
香
(
・
)
彩
(
・
)
でなければいい』
前へ
133 / 409
次へ
ともだちにシェアしよう!
ツイート
結城星乃
ログイン
しおり一覧