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蒼竜は泡沫夢幻の縛魔師を寵愛する 第150話 成人の儀 其の十六 ──ここへおいで── | 結城星乃の小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
蒼竜は泡沫夢幻の縛魔師を寵愛する
第150話 成人の儀 其の十六 ...
作者:
結城星乃
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第150話 成人の儀 其の十六 ──ここへおいで──
紫雨
(
むらさめ
)
の吐息が、口唇に触れるくらいの距離でそう話した後、彼は
香彩
(
かさい
)
の口唇の柔らかさを今一度堪能するように、ゆっくりと塞いだ。
神澪酒
(
しんれいしゅ
)
の味を纏った
紫雨
(
むらさめ
)
の舌が、ねっとりと
香彩
(
かさい
)
の舌に絡んだと思いきや、ゆっくりと口腔内を蹂躙する。 まるでこの酒の効果を、口腔にも擦り付けるかのように。 弱い上顎を舌先で擽られれば、
香彩
(
かさい
)
はくぐもった艶声を上げた。今までで一等甘い声だ。だが中途半端な状態で、
紫雨
(
むらさめ
)
は口唇を離す。 「……はぁ……っ、ん……」 甘い喜悦の声が、
紫雨
(
むらさめ
)
の唾液で色付く口唇から洩れる。名残を残したそれは、今にも追い縋ってしまいそうなほどだった。 だがそんな色に濡れ始めた
香彩
(
かさい
)
を置いて、
紫雨
(
むらさめ
)
は徐に丸椅子から立ち上がった。 「まさに好都合、だろう? 俺にとっても、勿論」 お前にとっても。 そう話しながら
紫雨
(
むらさめ
)
は、用意された寝台の方に向かって歩く。 「ここで今から起こること、感じたこと、全て
神澪酒
(
しんれいしゅ
)
と神気の相乗効果の所為だ。天に棲むとされている神聖な『力』を持った真竜の神気が関わっているんだ。人である俺達にどうこう出来るわけがない。それに……」 寝台に腰かけた
紫雨
(
むらさめ
)
が、
香彩
(
かさい
)
を見る。 その動作は、恐ろしくしなやかで獰猛な獣が、獲物を狙い定めたようなそんな印象がして、ぞくりとした。 熱い息を吐く。 とろりと潤んだ瞳で
紫雨
(
むらさめ
)
を見る。 もうどうにかして欲しいと
香彩
(
かさい
)
は思った。 だが
紫雨
(
むらさめ
)
は寝台から動く気配を見せない。 「お前が多分こうなることを分かっていて、俺はお前に
神澪酒
(
しんれいしゅ
)
を飲ませた。だからこれは俺の所為だ。
香彩
(
かさい
)
」 ああ、やられた、と。 頭の片隅でそんなことを思う。 あの時、
紫雨
(
あなた
)
だけを悪者にしない為に、蒼竜の前で
接吻
(
くちづけ
)
を交わしたというのに。 ここで悪者になるつもりなのか。
香彩
(
かさい
)
はくすりと笑った。 そんなことはさせないと、熱に浮かされた頭のどこかで思う。 選んだのは、自分自身なのだ。 「……
神澪酒
(
しんれいしゅ
)
を飲むって……決めたのは……っ! あなたに…っ、抱かれるって、決め……たの…は、ぼく、だよ。むら……さめ……っ」 だから
紫雨
(
あなた
)
だけの所為ではないのだと、
香彩
(
かさい
)
は言いたかった。 「……っ、
香彩
(
かさい
)
」 どこか苦々しい口調で、
紫雨
(
むらさめ
)
が
香彩
(
かさい
)
の名前を呼ぶ。 その端正な風貌の目元が怜悧で、まっすぐに向かってくる視線が射るほど強い。その奥に今までにない孕んだ熱を感じて、
香彩
(
かさい
)
の背をぞくりとしたものが駆け上がる。同時にそれは自身の中で熱となり、頭の中がぼぉうとするようだった。 「ならば……自分からここへおいで。
香彩
(
かさい
)
」
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結城星乃
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