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第156話 成人の儀 其の二十二★       ──成熟した漿果──

「……あっ…」  紫雨(むらさめ)の人差し指の先が、薄い胸の頂きを軽く弾く。乳嘴(にゅうし)は既に濃桃色の、成熟した漿果(しょうか)のように勃ち上がっていた。紫雨が軽く指先で丸く触れるだけで上を向き、鄙猥にも暈までもが膨らんでいる。 「ここにも痕が残っているな。それによく育っている。ここで快楽を得るには刻がかかるというが……全く、何れ程弄られ吸われたのか」  揶揄うように低く囁かれながらも、今度は指先で強く擦られる。そして優しく苛めるように乳嘴を摘ままれ、軽く引っ張り上げられれば、堪らないとばかりに香彩(かさい)は啼いた。 「……やぁぁぁ…、だめ……ぇ…っ」 「何れ程だ? 何れ程、奴に弄らせ吸わせた?」  欲で掠れた紫雨の低い声と、引っ張られながらも擦られる乳嘴の強い快楽に、香彩の身体が無意識の内に戦慄く。  強い視線の感じるがままに目線を上げれば、香彩を見る紫雨の、飢えたような鋭い眼とぶつかった。その深翠の奥に見えるのは、欲を孕んだ熱と、色めき立った焦燥だ。 (……ああ、一緒だ)   ずっと見てきた、あの伽羅色の熱と。  彼もまたずっとずっと、紫雨に対する嫉妬心を抱えたまま、焦燥に満ちた獣のような眼で、香彩を抱いたのだ。  今の紫雨と同じように。 「……分から…ない」  「ん?」 「分からない…くらい……っ、たくさん…」 「ほぉう? こんな風にか?」 「──……あっ!」  濃桃色の大きく成熟した漿果の先端を、先程よりも、きゅうときつく摘ままれる。そして指の腹で捏ねられ擦られれば、香彩の甘い色声は更に色付き、呼吸は震えるのだ。 「…はぁ…っ、んぁ……っぁ…はぁ」 「何とも愛い奴よ。こんなに紅く色付くまで摘まんだというのに、ここまで感じるとは……愛いなぁ、かさい」  「あ……」 「愛いがお前の身体を、竜紅人(りゅこうと)の奴がこの短い期間でここまで拓けたのだと思うと……俺としてはかなり複雑だがな……っ」 「ああっ……!」  より色付くように、今度は暈ごと摘ままれ捏ねられて、香彩はより一層啼いた。  既に勃ち上がっている香彩の若茎からは、瑞々しい蜜がぽたぽたと流れ落ち、再び紫雨の下衣に染みを作っている。  甘い痛みを伴う紫雨の愛撫は、その痛みすらも快楽に変わり、身体の一番奥が自然と開かれていく。その何とも言えない堪らなさに、香彩は一筋の情慾の涙の流した。  くつりと紫雨は笑いながら、香彩の目尻に口付ける。涙の痕を追いかけるように、軽く接吻(くちづけ)を落としながら、再び喉笛を軽く含んだ。やがて口唇で触れるだけだったそこに舌が加わる。舌は少し下がり、鎖骨の出っ張った丸い骨にたどり着くと、味わうように口に含んだあと、甘く噛んだ。香彩の啼く声などお構い無しに、鎖骨の窪み線に沿って舌を這わせる。反対側の鎖骨も一頻り舐めた後、紫雨の舌は香彩の身体の真中から胸に向かって這う。  一番濃い紫色をした、竜紅人の唇痕を避けて。

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