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第157話 成人の儀 其の二十三★       ──もっと噛んでほしい──

 紫雨(むらさめ)が齎す甘い痛みに酔い痴れながらも、彼のその行動が香彩(かさい)には不思議でならなかった。耳裏と首筋にあった竜紅人(りゅこうと)の唇痕を、ほとんどと言っていい程、塗り替えた紫雨が何故一番濃い情華を避けたのか、理由が分からなかったのだ。  だが心内で安堵する自分がいる。  この唇痕は特別だ。  自分自身への慰めに、希って何度も付けて貰ったものだから。  既に離れてしまった竜紅人に心内で情を寄せていた香彩は、胸に感じた生暖かい感触に我に返る。  背筋をぞくりと駆け上がる甘い疼き。 「あ……あぁっ……は…」  ふっくりと腫れてしまった暈と、紅く色付く胸の頂きを、紫雨の熱い舌が、ねっとりと舐め上げた。  暈をまあるく幾度も舐め、舌先を硬くして熟れた漿果の先端を突付き、そして捏ねる。指とは全く違う熱さと滑り、その気持ち良さに香彩は啼いた。幾度も繰り返されるその舌の動きに、無意識の内に身体は跳ね、自身の艶かしい声が鼓膜に焼き付く。 「──……っ、ああっ!」   やがて暈ごと胸の頂きを口に含まれ吸われて、一層高い艶声を香彩は上げた。  紫雨の舌は容赦がない。暈と媚芯を緩急を付けて吸い上げながらも、舌はぐうるりと暈を舐め回し、媚芯を細かい舌の動きで責め立てる。 「…やぁ……あっ、はっ、むら…さめぇ……」  卑猥な音を立てて口唇から解放されれば、刺激によってすっかり色付き、熟れて大きくなった頂きが、瑞々しくも唾液に濡れて硬く上を向いていた。   「あ……」  香彩は見てしまった。  紫雨の口唇と胸の頂きとの間に引いた、淫靡で透明な線を。  思わず紫雨の頭を両手で掴み、髪をくしゃりと撫でる。香彩の反応に気を良くした紫雨が、熟れた胸の媚芯を甘噛みした。 「──……あぁぁぁっ!!」  今にも泣き出しそうな、切なさを含んだ甘い声が上がる。  びりっと痺れたような痛みと、やがてじわりと広がる深い甘悦に、香彩は思わず紫雨の頭を縋るように抱え込んだ。  堪らない。  紫雨(あなた)から与えられるこの、熱くて甘い痛みが堪らない。 「はぁ…ぁっ……あ……」 「痛みを伴う愛撫など、(いと)わしいものとばかり思っていたが……お前を見て気が変わった。何とも(そそ)るものよ」  刺激を追い求めて縋り啼くかのような香彩の声に、紫雨のくつくつとした笑い声が胸に響く。 「……噛まれたいか? いけない子だ……かさい」  「違っ……、──や、あぁぁ……っ!」  熟れた漿果を再び噛まれれば、酷く甘い痛みが全身に広がっていくようだった。びくりと身体が反応し、 尾骶に溜まる疼痛を逃そうと、無意識の内に香彩の腰が揺れる。  もっと噛んで欲しい。  だがこれ以上噛まれたら、自分がどうなってしまうのか分からない。  不安と期待が一緒になって、どうしようもない程に気持ちが昂っていく。  香彩の戸惑いと歓喜に揺れる心を余所に、紫雨の舌は、つつ、と淫靡な糸を引きながらも、反対側の胸の媚芯も同じように舐め上げる。  やがてきつく吸われながら、彼の骨張った熱い手は香彩の白い腹を探り、そして瑞々しい花芯と若茎を絡め取ったのだ。   

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