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第169話 成人の儀 其の三十五★       ──思念体──

   無言のまま香彩(かさい)の後蕾に二本の指を入れ、胎内を(まさぐ)り始める竜紅人(りゅこうと)に、香彩(かさい)は先程までとは打って変わったような、柔らかな艶声を上げた。  身体はすんなりと、既に竜紅人の登場を受け入れている。  指先から感じる体温が、指の細やかな動きそのものが、ああ求めていたものだと悦び、きゅうきゅうと指を食い締めていた。  だが心は戸惑いと羞恥、そして悲しみで、竜紅人を受け入れられずにいる。  香彩は信じられないとばかりに、首を横に振った。  知られたくなかった。  見て欲しくなかった。  紫雨(むらさめ)の指によって胎内(なか)の極致を得て濡れそぼち、とろりと蜜が溢れるほどに、柔らかくなってしまった後蕾。吸われて噛まれ、紅く色付いた胸先。揉み拉かれた、白桃のような瑞々しい臀。一度白濁とした熱を吐き出したにも関わらず、先走りの蜜を溢れさせ反り勃つ桃色の陽物。  白かった肌は薄桃に色付き、身体全体を染め上げる。それは全て紫雨の口唇や手指、官能的な低い声によって齎された愛撫の証だ。  竜紅人には見られたくなかった。  香彩は艶やかな表情の何処かに、戸惑いと悲しみを見せながら、竜紅人の伽羅色と視線を合わせ、いやいやとばかりに再び首を横に振る。  だがそんな香彩の心情など構うことなく竜紅人は、欲の孕んだ声で香彩の名前を呼ぶと、空いている方の手で頤を掴む。 「りゅ……──っ!」  香彩が何か言い募ろうとするその唇を封じるかのように、竜紅人が自らの唇で塞いだ。 「……んんっ、んっ…んっ……!」  胎内を(まさぐ)る竜紅人の指と、そして紫雨の指とが、ゆっくりと抽送を始める。  香彩は、くぐもった声を上げた。  胎内(なか)を暴き、もっと柔らかく解そうとする四本の指の動きに、自然と香彩の腰が揺らめき始める。  そんな香彩と竜紅人の様子を、くつくつと喉奥で面白そうに笑うのは紫雨だった。 「もしやと思っていたが……この一番濃い唇痕、やけに神気が強いと思って避けたが、やはり媒体だったか。わざわざ思念体を送ってくるとは、本当に真竜とは嫉妬深いものだ」  思念体という言葉に、香彩は薄っすらと目を開け、視線だけで紫雨を見る。  だがそれが気に食わなかったのか、竜紅人が容赦なく香彩の口腔内を蹂躙する。その熱い舌は的確に、香彩の弱いところを責め立てるのだ。 「……んん、っふ……ん」  全て、全て、気持ち良いという感情しか生まれて来ない。心がどんなに嫌だと訴えていても、身体は素直に紫雨と竜紅人を受け入れている。  頭が真っ白に悦楽に染められていくのを感じながらも、香彩は薄っすらと開けた目を竜紅人に向けた。

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