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蒼竜は泡沫夢幻の縛魔師を寵愛する 第242話 災悪の魔妖 其の七 | 結城星乃の小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
蒼竜は泡沫夢幻の縛魔師を寵愛する
第242話 災悪の魔妖 其の七
作者:
結城星乃
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242 / 409
第242話 災悪の魔妖 其の七
厭魘艶嫣
(
えんえんえんえん
)
、
怨瘟陰鴛
(
おんおんおんおん
)
、
厭魘艶嫣
(
えんえんえんえん
)
、
怨瘟陰鴛
(
おんおんおんおん
)
。
厭魘艶嫣
(
えんえんえんえん
)
、
怨瘟陰鴛
(
おんおんおんおん
)
、
厭魘艶嫣
(
えんえんえんえん
)
、
怨瘟陰鴛
(
おんおんおんおん
)
。
厭
(
いと
)
われ
魘鬼
(
おに
)
の
艶
(
あで
)
やかに
嫣美
(
うつく
)
しき、
怨瘟
(
おんおん
)
と恨み怨まれ病んだは陰陽の
雛子
(
とり
)
。 その忌み声は止むことはない。 彼の官能的な低い声もまた、ずっとその言の葉を紡いでいる。
怨瘟
(
おんおん
)
、と。 恨み怨まれ病んだは陰陽の……。 (……ずっとあの人は隠し持っていたのだろうか?) (僕を……恨む気持ちを) (ああ、でも彼の心の奥底で恨まれても、仕方ないのかもしれない)
香彩
(
かさい
)
は再び
紫雨
(
むらさめ
)
と視線を合わせた。 自分よりも深い翠水が、鋭さを帯びる。 (──だって、僕は……) 紫雨の最愛の人の命を、奪ったのも同然なのだから。 紫雨がゆっくりと、だが確実に一歩、また一歩と香彩に向かって距離を詰める。 彼に絡むように纏わり付く影が、長い腕を更に伸ばして、やがて香彩の頬に触れた。言い様のない嫌悪感と、そして正反対の情愛の心が香彩の中に生まれて鬩ぎ合う。 影の触れ方は、成人の儀の時の紫雨の触れ方と全く一緒だった。影だというのに、その温もりすら覚えのあるものだ。影のくせにと心の中で毒突く反面、その感触に流されてみたい気分にもさせられて、粟立つ感情がやけに腹立だしく思えて仕方がない。 心と身体を繋ぐものが、もう既に散々なのだという自覚はある。 だからだろうか。 身体か心のどちらかが、嫌だと叫んでいるというのに、香彩は頬に触れる影の手の甲に自分の手を重ねて、その温もりを堪能するかのように頬を寄せた。 (……ごめんなさい) ずっと認めたくなくて、見ない振りをしていた。分からない振りをしていた。 (あの人が僕を、恨まないはずがないんだ) どんなに自分を慈しみ、愛して育ててくれたのかを知っている。 その慈愛の裏にひた隠しにしていた、情欲の念と情愛を知っている。 それでも心の奥底にずっと、それこそ紫雨すら気付いていないほどの奥底にあった恨心を、病鬼が曝け出してしまったのだ。
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