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第366話 蒼竜との御契 其の十四 ★
「ひうっ、んやぁぁ──……っ、あ、熱……あついぃぃ……」
つつと熱が僅かだったが、後蕾から溢れる。栓の役目をしていた根元の瘤が小さくなったのか。それとも竜の熱に含まれる神気によって、後蕾が柔くこなれてしまったのか。
蒼竜は唸りながら掴んでいた腰を離すと、前脚を香彩 のすぐ目の前の敷包布に付いた。
「──っ!」
ぐっと体重を掛けられて、香彩は息を詰める。
何かを確かめるかのように蒼竜が袋内で軽く陰茎を抽送させれば、根元の瘤は更に大きくなり、後蕾のすぐ挿入った先で再び栓となった。
堪らないのが香彩だった。
竜体が背に付いて苦しいところに、胎内までもが栓をされて苦しくて堪らない。
だがこの苦しさが、快感に変わる。懇願が届かずいい様にされているのというのに、どうしようもなく感じ入ってしまう。
自制の全く効かない恐怖。
狂うような灼熱の精。
絶望すら感じる法悦への飢餓。
頭の中が真っ白になって落ちる寸前に与えられる、髪の先から足の指の先まで満たされるような感覚は、希っているのに何度味わっても慣れることはない。
「あ……あ……」
香彩の声の質が苦し気ながらも、陶然としたものへと変わっていくことに何かを感じたのか。蒼竜が長い舌で慰めるように香彩の頬を舐める。ふわりと濃厚な春花の香りが漂う中に、僅かながらに森の木々の香りがして、香彩は思わず雄楔を包む胎内 をきゅうと締め付けた。
馴染みのある香りに身体が、まるで当然のことのように反応してしまう。
蒼竜は吼えた。
堪らないとばかりに高く声を上げながら、猛然と腰を振る。
「んあぁっ、あ、ああっ!」
力では絶対に敵わない、完全な支配下に置かれての蒼竜との御契 は、愉悦と屈辱の紙一重だ。いい様にされることの悔しさの中にある服従の悦びは、香彩に幾重もの法悦を齎してくれる。また蒼竜がこんなにも自分を求めてくれるのだという嬉しさと優越感もまた、悦びと心を満たすのだ。
何度も腰を叩き付ける蒼竜がふと、不満そうな鳴き声を上げた。香彩の項を執拗に舐め上げながら頻りに唸っていたかと思うと、何かを紛らわすかのように香彩の肩を食む。
「……っ! ぁああ、んんっ!」
鋭い痛みを感じて香彩は仰け反った。だがその痛みもまた唾液に含まれる神気の効果によって、じわりとした悦楽へと変わっていく。
ここでも蒼竜は執拗だった。
場所を変えて首の周りを何度も何度も噛む。白い肌に落とされるいくつもの紅の牙痕は熱を生み、新たな快楽の波になる。
──ああ、蒼竜は噛めないのだ。
項を。
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