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第405話 竜の寵愛 其の十二★

 宥めるように竜紅人(りゅこうと)香彩(かさい)の頬に触れる。  その温かさ心地良さに縋りたくて、香彩は整いつつある息を手の平に吹き掛けながら、頬を擦り寄せた。彼の舌遣いや手の平、甘やかな声に脳が思考が、どろりと溶けてしまいそうだった。  かさい……と吐息混じりの低い声が鼓膜に落ちてきて、脳がじんと痺れる。情欲に支配されて、理性が溶けかけている時の声だ。自分しか知らない竜紅人の声に、自分の中の独占欲のようなものが満たされていくのを感じて、香彩は深く息をつく。     この竜は自分だけのものだ。  自分だけの竜だ。  こんな身体の奥深くまで雄蕊で自分を支配し、愛することの出来る竜だ。     心の中でふと浮かび上がった感情が、激流のようになって香彩の身体の全てを駆け巡る。背筋をぞくぞくとした得体の知れないものが這い、そして心が切なくてもどかしい。   「……はぁ……っ、りゅ……う? お、ねが……い」 「ん?」    まだ息の整わない香彩の言葉に、竜紅人が短く応えを返す。   「お、ねが……い、りゅう……っ、しっぽ、解いて。ぎゅって……した、い」    あの大きな背中に縋りたかった。  頬だけじゃなくて身体全体で、体温を、熱さを感じたかった。   「……りゅう……」 「──っ、かさい……っ」 「あぁ……!」    竜尾で縛られて、二本の雄蕊の亀頭を身体の奥深くにある袋口に受け入れたままで、竜紅人は歩き出した。振動で袋口を責められる快楽に香彩は、喉を仰反らせて喘ぐ。  辿り着いた場所は湯殿の休憩処に備え付けてある、身体を休める為の簡易的な寝台だった。  ゆっくりと降ろされて背中が敷包布につく。  気付けば竜尾は消えていたが、香彩の身体は竜紅人の腕によって、拘束されるかのように抱き締められていた。熱いまでの体温を全身に感じる。そして力強い腕の強さを上半身に感じて、香彩は腕を彼の背中に回して抱き締める。触れるところ全てが気持ち良くて愛しくて、この体温の熱さに酔ってしまいそうだと香彩は思った。   (……もう、酔ってしまったのかもしれない)    好きという感情が溢れて堪らないのだ。  既に心は竜紅人という唯一の人に満たされて、隙間すらない。それなのに隅々まで愛でられて、胎内の奥の奥まで知られたこの身体を、人形の貴方の二本の熱で染め上げられてしまったら、どうなってしまうのだろう。愛しくてもう息も出来なくなるのではないだろうか。   「りゅう……」            

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