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第406話 竜の寵愛 其の十三★

「ん? どうした……?」     香彩(かさい)の声に、囁く彼の声がひどく甘い。  吐息が触れるほどの近さに、竜紅人(りゅこうと)の優しい伽羅色がある。  愛しいのだと言わんばかりに見つめる瞳に、自分しか映っていないというのは、なんて幸せなことなのだろうと香彩は思う。  ずっと、ずっと竜紅人は優しかった。   (優しくも厳しい、僕の……竜)  片時も忘れたくないと思った。  彼の声色を、温もりを、匂いを、熱を。   「……りゅう……っ」      堪らなくなった感情のままに、香彩は情慾の涙を流した。大粒のそれが頬を幾度も伝い、次第に止まらなくなる。  宥めるように目蓋に接吻を落とし、眦を軽く吸うのは竜紅人だ。  少しぼやけた視界の向こうで。  くつりと喉奥で響く彼の笑い声が、腰にじんと響く。   「大人になって少しはましになったかと思ったが……やっぱり泣き虫だな、かさい。それに……こっちはそれなりに我慢してんだから、あんまりそんな顔、見せるなよ」 「……ぇ」 「──もっと……啼かせたくなる」 「……っ!」    ずくりと尾骶が疼いたと思いきや、ゆっくりと腰を揺らされて、痺れるような快楽が香彩の全身を襲った。   「あ……っ、ひあっ……!」    袋口に二本の雄蕊の亀頭が入り込む度に、香彩の口から甘い悲鳴のような嬌声が零れる。決して激しい抽送ではないというのに、気持ち良くて堪らない。  同時にいつもと何かが違うと、おかしいのだと、心が訴え始める。  ここまでの深い挿入は決して初めての経験ではない。長さのあった蒼竜の陰茎は、香彩の胎内の一番奥『真竜の眠り袋』の袋口を優に超え、袋底をこれでもかと責め立てていた。だが人形の竜紅人が部分的に転変させた雄蕊は、まだ袋口を出入りするだけだ。  香彩の視界が再び滲む。  胎内が明らかにいつもよりも熱くて柔らかい気がした。何かの生き物のように畝りながらもびくりと震えて、竜紅人の雄蕊の雄形(かたち)をきゅうと抱き締める。その熱さや硬さ、竿にくっきりと浮いた雄々しい筋や、どくりと脈打って大きくなる様、栓となっている二つの瘤の膨らむ様まで。その全てを胎内の媚肉が受け止めて、愛でている。   (──ああ……)    身体の全てが竜紅人を愛している。  そう自覚した途端、今までに感じたことのない、言い様のない深い快楽が身体の奥底から湧いてくるようで、香彩は堪らずいやいやと(かぶり)を振った。   「……あ、待って! まって……りゅう……っ! だめ、だめだよ……こんなの……っ!」 「ん? 何が、だめ?」 「だって……あ、んっ……、こんなの……これ、から……ひとつじゃ……あ!」 「物足りなくなるって?」                

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