2 / 12
寒空_2
「――うっま!旨いな!何これ、高級品!?」
「いえ、近所のスーパーで買ってきたレバーです。お口に合ったようで何より」
「味付けも最高!」
結局、連れて帰って来てしまった。
一夜明けて時刻は昼を過ぎる頃。一度目を覚ました彼は貧血と空腹を訴えたので、こうして焼いたレバーを差し出してみたのだが、なかなかお気に召したようだ。
「一応血抜きはしなかったのですけど……生き血じゃなくて申し訳ないです」
「ん?いやこれで十分。腹も膨れるし旨いし栄養ちゃんと取れるしな」
「はぁ……そういうものなんですか?」
「んー……まあ生血の方が栄養価高いのは事実だけどな。中でも人間の血は極上ってのは昔から言われてる」
「言われてると仰るのであれば、貴方は飲んだ事がないと?」
「あったり前だろ!この牙に誓ってねーよ!」
牙に誓われても……。
「でも昨晩涎を垂らして私の顔を覗いていらっしゃいましたよね?」
「うっ………いや、それは、その違くて」
しどろもどろになる彼はどう言ったもんかと両手で頭を抱えテーブルに突っ伏してしまったので、話題を変えることにする。
「では普段からレバーでも食べているんですか?」
「まあ食う時もあるけど、普段は………………――あ!?」
彼が勢いよく立ち上がったせいでテーブルに並んだ食器は派手な音を鳴らす。
「やっべぇ……仕事!悪い、俺行かないと!」
「え、はぁ……」
「夜また来るから、これ取っておいて!じゃ!」
彼が指したこれとは食べかけのレバーの事で、言うなり早々と駆け出して行ってしまった。
仕事……なんてしているのか、吸血鬼なのに。
と言うか。
「…………夜も、来るんですね」
ともだちにシェアしよう!