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寒空_4
彼が手にしている袋には白い棒状のものが沢山敷き詰められている。
「何ですか、それ?」
「んだよ、知らないのかよ?チーズ鱈だよ、チーズ鱈」
「チーズと鱈?」
「百聞は一見にしかず!食ってみろよ」
開封されたそれを差し出されて言われるがまま口の中へ。
広がる濃厚なチーズと鱈の香りは思っていたよりも相性がいい。
「…………美味しい」
「だろぉ?遠慮しないで食えよ」
彼は上機嫌でチーズ鱈をテーブルに置くと、他にも次々と買ってきたおつまみを広げ始める。
「…………吸血鬼でもこういった物を食べるんですね」
「ったりめぇだろ!俺はグルメな男だぜ?」
「はぁ……」
「ところで朝残してったレバーは?」
「さすがに残しておけませんよ。もし食べたいのでしたらまた作りますが?幸い材料は残ってますし」
「いいの?」
「構いませんよ。人のために食事を用意するのは嫌いじゃないので」
背中に感謝の言葉を受けながらキッチンに立ち、ふと視界に入った彼の姿にそう言えばと口を開く。
「羽、仕舞えるんですね」
「ん?おう、まあな。けど正確には仕舞ってるって言うより、人間の姿に化けてるって方が合ってる気がすんな」
にわかには信じがたいが服の下にあの羽が仕舞ってある様子はない。
「……そうですか」
「お前、訊いてきたくせに反応薄いな。何か達観してるし、見た目若そうなくせして」
「今年で二十七です」
「わっか!」
「貴方は……」
そう一瞥した彼は改めて見るとやはり顔の造りは綺麗な気がする。歳はご主人様と同じ……いや、少し下ぐらいだろうか?
「三十代後半から四十代前半と言ったところでしょうか?」
「まあ、ざっと二百五十ぐらいってとこかな」
「…………」
「おい、止めろ。何だよ、その憐れむような目!マジだからな!吸血鬼ってのは長寿なの!」
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